丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の妖怪伝承を紹介するブログです。

南丹市

唸り石

唸り石 (うなりいし)


室河原の八幡神社の向かいに腹が谷という谷がある。
天正七年(1579)、八木城主・内藤備前守は居城を明智光秀に攻め落とされ切腹した。
それ以来、その付近(腹が谷?)にある大きな石が今でも時々唸るという。

『丹波の伝承』「腹が谷」より


八木町木原から園部町小山東町の徳雲寺へ抜ける山道を「はらきり峠」と言い、内藤備前守はこの峠で切腹したと伝えられています。


伝承地:南丹市八木町室河原


諏訪の森の白狐

諏訪の森の白狐 (すわのもりのしろぎつね)


昔、船岡の諏訪の森という所に沢山の狐が棲んでいて、よく人を化かしていた。
明治三十八年(1905)頃、山陰鉄道を敷設する工事が行われたが、諏訪の森にある底なし沼は一向に埋まらず、作業は難航していた。
そんなある夜、飯場で眠る若い男の枕元に、白い姿の艶めかしい美女が現れた。
美女は毎晩枕元に現れ、遂に体を触ってきたので、男は驚いて目を覚ました。
すると白狐が顔や体を舐めていたので、男は腹を立て狐を打ち殺した。
それから毎晩、男は白狐の美女に誘われては底なし沼に沈む夢にうなされるようになり、また諏訪の森に狐火が灯るようになった。
やがて諏訪山のトンネル工事で崩落事故が起こり、犠牲者が出てしまった。
事故現場には玉石を巻いた二匹の白蛇がいて、村人たちは「白蛇は諏訪山の主だ。主の使いの白狐を殺した祟りだ」と言って大騒ぎになった。
そこで工事関係者と村の代表が伏見の稲荷大社に参詣し、正一位大杉稲荷大明神を諏訪の森に移祀した。
その後、大杉稲荷は願い事を叶えてくれる神社として、真夜中に願をかける者が絶えなかったという。
また諏訪山の木や枝を切ると災いが起こるため、いつしか「おしんぼ(惜しい)山」と呼ばれるようになったという。

『ふるさと史 大堰の流れ』「鉄橋工事と諏訪の森」
『園部探訪』「諏訪の森物語り」
『現地案内板』より



大杉稲荷神社
船岡の大杉稲荷神社。
諏訪山峠の中腹にひっそりと祀られています。
扁額に「大杉大明神」の文字が見えます。


大杉稲荷社殿
社には大杉稲荷の他、諏訪神社と千葉大明神の御神体(石)が祀られています。
今は稲荷神社(大杉稲荷大明神)がメインで祀られていますが、元々は諏訪神を祀る神社でした。
大杉稲荷大明神は峠の南にある千妻地区の某家の地神でしたが、明治四十一年(1908)、同じ地神であった千葉大明神共々諏訪神社に合祀されたそうです。


洞の鳥居
社殿横の杉の根元に洞があり、小さな鳥居が奉納されていました。狐の穴?


諏訪山トンネル
JR船岡駅から見る諏訪山トンネル。
向かって左側の山に大杉稲荷神社があります。
昔、丑三つ時になるとトンネルや鉄橋がキーンキーンと不思議な音を立てることがあり、工事で犠牲になった人の魂の叫びだと噂されました。
ですがその正体は昼夜の温度差によって線路が鳴る音だったそうです。

また亀岡市には「山陰鉄道の保津峡のトンネル付近に棲む大蛇が、工事で棲み処を荒らされた怨みから鉄道事故を起こした」という話が伝えられています。(『口丹波口碑集』)


伝承地:南丹市園部町船岡


弁天井戸の鰻

弁天井戸の鰻 (べんてんいどのうなぎ)


中世木の大山祇神社の境内には「弁天井戸」という井戸がある。
井戸には耳の白い鰻が棲んでいるが、いつも井戸底にいて滅多に姿を見せない。
この鰻が水面に顔を出した時は、必ず雨が降ると伝えられている。

『丹波の伝承』「弁天井戸の鰻」より


伝承地:南丹市日吉町中世木・大山祇神社


細谷の大蛇

細谷の大蛇 (ほそたにのだいじゃ)


半国山の細谷に「からと淵」という大きな滝がある。
その下に「とこ」という頭の形が鋤床に似た大蛇が棲んでいて、夜な夜な八田の里に出没したという。
源次郎谷という谷には金銀色の大蛇がいたといい、また第二次大戦中に奥山で大人の腕程の太さの蛇と遭遇し、一晩中うなされた人もいたという。

『園部探訪』「細谷の大蛇」より


他にも、昭和の頃に細谷へ猟に行った人が頭がてんころ(槌)程もある蛇を見て十日余り寝込んだという話もあります。(『忘れかけたふるさとのお話』)


伝承地:南丹市園部町南八田


たたり池

たたり池 (たたりいけ)


秋葉山の金比羅神社の横に“たたり池”と呼ばれるごみだらけの汚い池がある。
この池を綺麗にすれば祟りがあると言われ、誰も掃除をしない。
またこの池に汚物や石を投げ込めば大雨が降るとも言われている。

ある年の夏、下佐々江の村人総出で金比羅神社の掃除をした。
だが祟りを知る村人たちは誰もたたり池に手をつけなかった。
そこで下村某という老人に頼み、池を綺麗に掃除してもらった。
するとその夜、下佐々江の村は豪雨による洪水に見舞われ、大きな被害を被った。
これはたたり池を綺麗にしたからだと言われている。

『ふるさと口丹波風土記』「秋葉山のたたり池(船井日吉町下佐々江)」より


伝承地:南丹市日吉町佐々江(たたり池が現存しているかは不明)


いわさきの狐


いわさきの狐 (いわさきのきつね)


昔、埴生の出雲神社の下を流れる川沿いに道があった。
その道に「いわさき」という切り通しがあり、そこに狐が棲みついていた。
ある日、この狐は人間に化け、行商中の魚屋から魚を買った。
それから狐は別人に姿を変えて何度も買い物を繰り返し、魚を全て買い占めた。
その後、魚屋が売り上げを勘定すると、受け取った金は木の葉に変わっていたという。

『忘れかけたふるさとのお話』「キツネが魚屋をばかす話」より


伝承地:南丹市園部町埴生


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