首吊り坊主 (くびつりぼうず)*
昔、みすぼらしい格好をした巡礼者が、ある農家に宿を求めた。
農家は一度は断ったものの、「庭の隅でも良いから泊めてほしい」と言うので、ムシロを渡して泊めることにした。
その家には嫁がいたが、体調を崩して長い間寝たきりになっているという。
夜、巡礼者は庭の隅の俵置き場で、俵にもたれかかり眠っていた。
すると、どこからともなく綺麗な坊主が現れ、俵の上に乗って部屋の方へおいでおいでと手招きをした。
それに呼ばれるように、部屋からハチマキを巻いた青い顔の嫁が出て来て、坊主がいる俵に乗った。
坊主は上から縄をかけて輪をこしらえると、嫁を促してそれに首をかけさせようとした。
首を吊らせようとしていることに気づいた巡礼者が、咄嗟に「いかん!」と大声で制止すると、坊主はたちまち姿を消してしまった。
正気に戻った嫁は「死神に誘われて首を吊りそうになったけど、止めてもらって命が助かった」と、巡礼者にお礼を言ったという。
『大江のむかしばなし』「遍路さんと首つり嫁」より
この奥さんを救った巡礼者は弘法大師だったそうです。