丸塚の化け蜘蛛 (まるづかのばけぐも)*
日暮れになると、丸塚(故屋岡町)の道に怪物が出るという噂が流れていた。
ある日、度胸のある村の若者が噂の怪物を見てみようと、深夜に丸塚へ行って煙草を吸いながらその出現を待っていた。
すると、山の方からパラパラと土が投げかけられてきた。
若者は動じることなく煙草をふかしていると、やがて土は止み、今度は一匹の蜘蛛がスルスルと下りて来た。
蜘蛛は若者の足に糸を引っかけると、再びスルスルと上って行った。
次の瞬間、若者の足にかけられた糸が、すごい力で上へと引かれだした。
若者は手にした鉈で力任せに糸を切ると、怪物は鋭い悲鳴を残して逃げて行った。
翌朝、村人が丸塚へ行くと、そこには血塗れの狸の尻尾が落ちていた。
村人は狸の尻尾をその場に埋め、小さな祠を建てて山の守り神として祀り始めたという。
毎年十二月十日を山の神の祀り日と定め、現在でも講を続けているという。
『ふるさとのかたりべ』「山の神」より