火無お龍 (ひなしのおたつ)


保津村には非常に年を経た三匹の狐が棲んでいて、村人を騙しては食物を奪い取っていたという。
妙見菩薩が祀られている所には雄狐の“山坊甚五郎(やまんぼのじんごろう)”、鬼が芝付近の松林には雌狐の“筧小女郎(かけいのこじょろ)”、そして墓地北側の梅林には雌狐の“火無お龍(ひなしのおたつ)”が棲んでいた。
中でも火無お龍は人間に化けるのが大変上手く、特にお龍という女性に化けるのが得意だったので、いつしか“お龍狐”や“火無お龍”と呼ばれるようになった。

その変化能力は高く、夜道でお龍に出会っても、それが「本物の人間のお龍」なのか、それとも「お龍に化けた火無お龍」なのか見分けがつかない程だったという。
そして火無お龍はよく嫁入りをし、その時には必ず火を灯すので「また火無お龍が嫁入りするぞ」と、人々が噂をした。
そして今でも、夜中の二時頃になると保津村から亀岡町までの道の両側に火を灯したりすることがあるという。

『丹波の伝承』「狐、二題」
『保津百景道しるべ』「No.15 火無しのお龍さん」より


保津の三狐、その内の一匹“火無お龍”の伝承です。名前がかっこいい。
お龍さんという実在した女性に化けるのが上手かったそうですが、化けられる側のお龍さんからしたらいい迷惑だったでしょうね。
火無お龍は何度も嫁入りをしていたそうですが、その数だけ離縁して来たのでしょうか。もしかしたらとんでもない悪妻だったのかもしれません。

山坊甚五郎
筧小女郎


伝承地:亀岡市保津町上火無