首吊れ (くびつれ)*
ある飛脚が手紙の配達先に向けて走っていた。
だが途中で便意を催してしまい、偶然近くにあった便所に飛び込んだ。
すると天井から「首吊れ。おもしれえぞ。首吊れ。おもしれえぞ」という声がする。
飛脚は「そんなに面白いことなのか」と思い、試そうとした。
だが仕事中であることを思い出し「先に手紙を届けて、戻って来た時に首を吊るから待っててくれ」と言って便所を飛び出し、目的地に向かった。
だが仕事中であることを思い出し「先に手紙を届けて、戻って来た時に首を吊るから待っててくれ」と言って便所を飛び出し、目的地に向かった。
無事に手紙を届けた帰り道、飛脚は再びその便所に飛び込んだ。
ところが、中では別の男が首を吊ってぶら下がっていた。
首吊り死体を見た飛脚は驚き、「首吊りとはこんなに恐ろしいことなのか」と思い直し、首吊りをせずに帰ったという。
『久美浜町の昔話 ふるさとのむかしばなし』「首つりの話」より
過去に紹介した福知山市の“首吊り坊主”のように、人を誘って首吊りをさせる嫌な妖怪です。
ただこちらは姿を見せず、声だけで首吊り自殺に誘うようです。
飛脚の「仕事が終わってから首吊るので待ってて」というくだりは『反古のうらがき』にある妖怪“縊鬼”の話と似ています。
首吊りを後回しにしたおかげで助かるところや、代わりに他の人が首を吊ってしまうところも同じです。
近年のものだと『新耳袋 第六夜』にも「庭の木を見ていると無性に首を吊りたくなったが、仕事を済ませてからにしようと思った。仕事を終えて戻って来ると、別の人が首を吊っていた」という、これまた似たような話が掲載されています。