鉈ヶ淵の大緋鯉 (なたがぶちのおおひごい)
二俣の奥山集落から更に1km程上がった先に「鉈ヶ淵」と呼ばれる深い淵がある。
この淵の水は渦を巻き、常に青黒く淀んでいる。周囲には老木や竹が生い茂っていて不気味な所だった。
ある日、村人がこの淵のそばで大鉈を振るって竹を伐っていたが、ふとした拍子に鉈を淵に落としてしまった。
竿を使い引き上げようとしたが、底なしと言われるほど深い淵に落ちた大鉈は、二度とこの村人の元には戻らなかった。
数日後、この淵に今まで見たこともないような大きな緋鯉が泳いでいるのを見つけた。
村人たちこの大緋鯉を釣ろうと、我先にと釣り竿を水中に垂らしていった。
やがてその中の一人が、見事に大緋鯉を釣り上げた。
喜んで近づくと、緋鯉は大きく跳ね上がると同時に大鉈へと姿を変え、その村人の頭を二つに割って、再び深い淵の底に沈んでいった。
以来、この淵は「鉈ヶ淵」と呼ばれるようになり、主となった大緋鯉の祟りを恐れて近づく者はなくなったという。
『熊野郡伝説史』「鉈ヶ淵(上佐濃村)」
『熊野のたび』「鉈ヶ淵」
『丹後の伝説 ふるさとのはなし』「鉈ヶ淵」より
鯉になりっぱなしというわけではなく、状況に応じて鉈に戻れるというのは面白いですね。
頭を割られた村人はたまったもんじゃないですけど。
ちなみに、同じ京丹後市の峰山町にも「鉈ヶ淵」の伝承があります。
こちらは「川に落とした鉈が、岸からは見えるのに何故か引き揚げられない」という内容で、鉈が鯉に変わったりはしないようです。