丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2019年04月

鉈ヶ淵の大緋鯉

鉈ヶ淵の大緋鯉 (なたがぶちのおおひごい)


二俣の奥山集落から更に1km程上がった先に「鉈ヶ淵」と呼ばれる深い淵がある。
この淵の水は渦を巻き、常に青黒く淀んでいる。周囲には老木や竹が生い茂っていて不気味な所だった。

ある日、村人がこの淵のそばで大鉈を振るって竹を伐っていたが、ふとした拍子に鉈を淵に落としてしまった。
竿を使い引き上げようとしたが、底なしと言われるほど深い淵に落ちた大鉈は、二度とこの村人の元には戻らなかった。

数日後、この淵に今まで見たこともないような大きな緋鯉が泳いでいるのを見つけた。
村人たちこの大緋鯉を釣ろうと、我先にと釣り竿を水中に垂らしていった。
やがてその中の一人が、見事に大緋鯉を釣り上げた。
喜んで近づくと、緋鯉は大きく跳ね上がると同時に大鉈へと姿を変え、その村人の頭を二つに割って、再び深い淵の底に沈んでいった。

以来、この淵は「鉈ヶ淵」と呼ばれるようになり、主となった大緋鯉の祟りを恐れて近づく者はなくなったという。

『熊野郡伝説史』「鉈ヶ淵(上佐濃村)」
『熊野のたび』「鉈ヶ淵」
『丹後の伝説 ふるさとのはなし』「鉈ヶ淵」より


鯉になりっぱなしというわけではなく、状況に応じて鉈に戻れるというのは面白いですね。
頭を割られた村人はたまったもんじゃないですけど。
ちなみに、同じ京丹後市の峰山町にも「鉈ヶ淵」の伝承があります。
こちらは「川に落とした鉈が、岸からは見えるのに何故か引き揚げられない」という内容で、鉈が鯉に変わったりはしないようです。

ぎゃあたろう

ぎゃあたろう


宮津北部の大島には、昔から“ぎゃあたろう”と呼ばれる正体不明の海獣がいると言われている。
ぎゃあたろうは河童の一種、あるいは怪獣だとか、「があ太郎」という名の無法者だとも言われているが、その正体はわからない。
ぎゃあたろうは沖合にはおらず、磯に棲んでいるという。
子供が時期外れに海へ入ったり、足の着かない沖合に出たりすると、ぎゃあたろうに引っ張られると伝えられている。

『宮津の民話 第二集』「海のこぼれ話」より


伝承地:宮津市大島



針売ろか、櫛売ろか

針売ろか、櫛売ろか (はりうろか、くしうろか)


昔、美山長尾の尾本というところに深い淵があった。
その淵の底からは「針売ろか、櫛売ろか」という悲しそうな男の声が聞こえてくるという。
これは昔、この場所に井根(水量を調節するために水を堰き止める所)を造った時、完成を祈願して水神に人柱を捧げることになった。
そこで村人たちは偶然通りかかった小間物屋を捕まえ、無理矢理人柱にして水底に沈めた。
それ以来、小間物屋の恨みの声が淵の底から聞こえてくるようになったという。

『近畿民俗』110号「丹波美山口碑集」より


たまたま通りかかっただけで人柱にされた可哀想な小間物屋さんの話です。
『四国路の伝説』にも、丸亀城の石垣を築くため、通りかかった豆腐屋を無理矢理人柱にして埋める→それ以来、城近くで「豆腐豆腐」と豆腐を売る切ない声が聞こえるようになる、という話があります。
ひょっとしてこういう「通行人を無理矢理人柱にしたら声が聞こえるようになった」系の伝承って各地にあるんでしょうか。
ちなみにこの井根は洪水にやられて今は残っていないそうです。

丸塚の化け蜘蛛

丸塚の化け蜘蛛 (まるづかのばけぐも)


日暮れになると、丸塚(故屋岡町)の道に怪物が出るという噂が流れていた。
ある日、度胸のある村の若者が噂の怪物を見てみようと、深夜に丸塚へ行って煙草を吸いながらその出現を待っていた。
すると、山の方からパラパラと土が投げかけられてきた。
若者は動じることなく煙草をふかしていると、やがて土は止み、今度は一匹の蜘蛛がスルスルと下りて来た。
蜘蛛は若者の足に糸を引っかけると、再びスルスルと上って行った。
次の瞬間、若者の足にかけられた糸が、すごい力で上へと引かれだした。
若者は手にした鉈で力任せに糸を切ると、怪物は鋭い悲鳴を残して逃げて行った。

翌朝、村人が丸塚へ行くと、そこには血塗れの狸の尻尾が落ちていた。
村人は狸の尻尾をその場に埋め、小さな祠を建てて山の守り神として祀り始めたという。
毎年十二月十日を山の神の祀り日と定め、現在でも講を続けているという。

『ふるさとのかたりべ』「山の神」より

マホ

マホ


江戸時代、和知で強訴(一揆のこと)が起こり、村人たちが金持ちの家を襲撃した。
その時、山から“マホ”というものが現れて強訴を手伝ったという。
強訴が終わると、マホはいつの間にか山へ帰っていた。
だが、強訴に参加していたにも関わらず、マホの正体はわからないままだったという。

『丹波物語』「強訴を手伝う「マホ」」より


山から現れて山へ帰っていく不思議な存在、マホ。
彼(彼ら?)は何者で、なぜ強訴に加わったのでしょうか。
その独特な名前の由来も気になるところですが、特に姿形の描写もなく情報もないに等しいので、残念ながら詳しいことはわかりません。

飛び込む河童

飛び込む河童 (とびこむかっぱ)


舞鶴に鉄道が出来た頃、線路の工員には巡回という仕事があった。
それは夜間に舞鶴方面と梅迫(綾部)方面の二手に分かれ、事故や破損がないかを確認しながら線路上を歩いて途中で合流する、というものだった。

ある夜、青年工員が巡回の当番になり、一人で線路上を歩いていた。
山崎の鉄橋にさしかかった時、「バシャ」という大きな水音がした。誰かが川に落ちたらしい。
「こんな時間に誰が?」と目をこらすと、鉄橋の先に黒い塊が五つほど見える。
青年が近づくと、黒い塊はバシャバシャという音と共に川の中へ飛び込んでいった。
夜中にこんな山の中で泳ぐ者などいない。きっとあれは河童だったのだろう、と話していたという。

『中筋のむかしと今 下』「河童の話」より


*正確な場所は不明。山崎神社裏手の鉄橋辺り?


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