丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2019年09月

アーオ鳥

アーオ鳥 (あーおどり)


足谷の山中では、初夏になると「アーオアーオ」と鳥の鳴き声が聞こえてくるという。
昔、腹を空かせた子供が炊き上がったばかりの米を釜から手掴みで食べ、口や手に大火傷を負って死んでしまった。
それ以来、死んだ子供が鳥になって「アーオアーオ」と悲しげに鳴くようになったと伝えられている。

『柚子の里 足谷誌』「あお鳥の事」より


鳥類転生。
夏に「アーオアーオ」と鳴くことから、おそらくこれはアオバトのことじゃないかと思います。
ちなみに伝承地の足谷集落は昭和五十年代に廃村となっており、現在は誰も住んでいません。
誰も来なくなった足谷の山の中で、アーオ鳥は今も鳴き続けているのでしょうか。


伝承地:伊根町菅野



丹波亀山城の白鯰

丹波亀山城の白鯰 (たんばかめやまじょうのしろなまず)


戦国時代、明智光秀が丹波亀山城を造らせた。
だが、原因はわからないが、この城は何度造り替えても少し西へ傾いてしまうという。
ある時、城が傾いていることに怒り狂った大工の棟梁が、ノミを咥えて天守閣から内堀に身を投げ自殺した。
そして棟梁は白鯰に転生し、掘の主となった。
その後、月夜の晩になると、白鯰が水面から頭を出して城を見つめるようになったという。

『口丹波口碑集』「白鯰の話」
『丹波の伝承』「亀山城の白鯰」より


白鯰転生。
『口丹波口碑集』では棟梁は城が上手く完成しないことにブチ切れて入水、『丹波の伝承』では責任を感じて入水……という風に、死に至る経緯が微妙に違っています。


伝承地:亀岡市荒塚町・丹波亀山城(城址)


杖を拾うもの

杖を拾うもの (つえをひろうもの)


目の不自由な老婆が、毎朝権現山(峰山町にある山)へ登って視力快復の祈願をしていた。
ある日、途中で杖を落としてしまったが、サッと誰かが拾ってくれた。
何度杖を落としても、すぐに拾ってくれるものがいたという。

『丹後の民話 第四集 ふるさとのむかしばなし』「ごんげん山」より


優しいですね。

シチャクチャ坊主

シチャクチャ坊主 (しちゃくちゃぼうず)


昔、爺さんと婆さんの夫婦が二人で住んでいた。
ある日、爺さんは用事で隣村まで行ったが、帰りが遅くなり、提灯を手に夜道を急いでいた。
途中、山間の淋しい道にさしかかった時、「シチャクチャ、シチャクチャ」と後ろからつけて来る音がしたが、振り返っても誰もいなかった。
だが先を急ぐと、また「シチャクチャ、シチャクチャ」と足音が聞こえて来る。
爺さんは気味悪く思いながら、やっとのことで家に帰り着いた。
夕食後、爺さんは「今日の帰り道、気味悪い足音が聞こえて、誰かが後ろからついて来た」と婆さんに話した。
すると婆さんは「それは“シチャクチャ坊主”や。それにつけられた時は『シチャクチャさん、お先にどうぞ』と言えばついて来なくなる」と教えてくれた。
その後、爺さんが夜道でシチャクチャ坊主につけられた時、婆さんの助言通りに「シチャクチャさん、お先にどうぞ」と言うと、シチャクチャ坊主はついて来なくなったという。

『続 京北の昔がたり』「シチャクチャ坊主」より


以前紹介した京丹後市の“ピシャどん”と同じく、音を立てながらついてくるタイプの妖怪です。
つけられた時の対処法は、奈良県に伝わる妖怪“べとべとさん”と同じですね。


伝承地:京都市右京区京北地域


弥仙山の竜

弥仙山の竜 (みせんさんのりゅう)


於与岐村(現・於与岐町)に吉崎権兵衛という、猟の得意な男がいた。
ある日、権兵衛が弥仙山で猟をしていると、にわかに豪雨に襲われたので、雨宿りにと木の下に逃げ込もうとした。
すると、どこからともなく眼光の鋭い大蛇が現れ飛びかかってきたので、権兵衛は頭を狙って猟銃を撃ち込んだ。
大蛇は大木が倒れるようなすさまじい音を立てて倒れ伏した。
それをよく見ると、頭には二本の角、鋭利な三角の歯は口の内側に向かって生え、足は四つで剣のような四本の尾があり、鱗の間から15cm程の尖った毛を生やした竜だったという。
権兵衛は祟りを恐れ、竜の遺骸を寺で供養した。
竜の顎は栖竜寺に預けたが、消失してしまったため今は下顎だけが残っているという。

『郷土誌 東八田』「雲源寺に残る伝説」より


龍の顎、機会があれば是非見てみたいですね。

岩鼻の羽衣姫

岩鼻の羽衣姫 (いわはなのはごろもひめ)


舞鶴の大波下に、野山という小さな山がある。
昔から村人はここで薪を集め、それを背負って家まで帰っていた。
その途中、頭上に大きな岩鼻(突き出た岩の端部分)が聳え、腰かけるのに丁度いい岩があるので、村人はここを休憩所として利用していた。

ある時、老婆がいつものように薪を集めて家に帰ろうとした時、急に胸が苦しくなった。
どうにか岩鼻の所まで辿り着き、岩に体を横たえた。
すると頭上にそびえる岩鼻の上に、どこからともなく美しい姿の羽衣姫が現れて舞を踊り始めた。
老婆は姫の踊りの美しさに心を奪われ、しばらく見入っていた。
不思議なことに、姫の舞を見ている内に、だんだん胸の苦しみが弱くなっていく。
ふと我に返った時には既に羽衣姫の姿はなく、老婆の胸の苦しみも治まっていた。
そして老婆は無事家に帰り着くことが出来たという。

それ以来、その休憩所を「極楽岩」、岩鼻を「舞姫岩」と呼ぶようになったという。

『舞鶴の民話 第一集』「岩ノ鼻(大波下)」より

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