丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2020年03月

八十匁蝋燭

八十匁蝋燭 (はちじゅうもんめろうそく)


ある日の夕暮れ、猟師が鉄砲を担いで家に帰っていた。
ふと近くの山の中腹を見ると、大店の大番頭風の男が八十匁(約300g)の蝋燭を灯し、机に向かって大きな算盤をパチパチと弾いていた。
猟師は「こんな所で変だな」と思い、脅しに空へ向けて鉄砲を撃つと、蝋燭の火が消え、男の姿は見えなくなった。
翌日の夕方も、また同じ所で大番頭風の男が八十匁蝋燭を灯して算盤を弾いていたので、今度は男の心臓を狙って鉄砲を撃ってみたが、蝋燭の火が消えただけで手応えはなかった。
そこで近所の老人に相談したところ、「化け物は自分の目を光らせているというから、次は蝋燭を狙って撃て」と教えられた。
翌日の夜、また同じ所に大番頭風の男が現れたので、三十匁(約112g)の弾で蝋燭を撃つと、見事に大狸を仕留めたという。

『丹後の民話 第二集 -ふるさとのむかしばなし-』「八十匁ろうそく」より


『日本昔話大成』で言うところの「山姥の糸車」タイプに分類される話です。
他の地域の類話では→老婆(または娘)が糸車を引いている。そばにある行灯を撃つと死ぬ。正体は小動物(狸、狢、梟、猿など色々)だった。
京丹後市では→大番頭風の男が算盤を弾いている。そばにある蝋燭を撃つと死ぬ。正体は狸。という具合に、姿形や行動、正体の違いはあるものの、全体の流れはだいたい同じになっています。

伝承地:京丹後市大宮町五十河


赤鯉坊主

赤鯉坊主 (あかごいぼうず)


昔、柏原の佐治川の「辺田の渕」という所に、三間(約5m)程の大きさの赤鯉が棲んでいた。
この赤鯉は大蜘蛛に化け、通行人を川に引きずり込んで食べると言われていた。
また、雨の日には美しい女に化け、旅人の笠から落ちる雨垂れの雫に乗って黒井の大名の下へと通うこともあったという。
赤鯉を恐れた村人たちは、ある時、柏原を治める大名へ退治を直訴した。
これを承諾した柏原の大名は、大量の炭火を川に投げ込み、水を沸き立たせて退治するという策を考えた。
そのためには大量の炭が必要になる。この日から村人や家臣総出で炭を集め、赤鯉退治の準備を進めていった。
そんな折、黒井を治める大名が柏原の大名を訪ねて来た。
黒井の大名は「赤鯉を殺すとお家が潰れるという噂を聞いたので、退治するのは止めた方がいい」と忠告した。
だが柏原の大名の決意が固いことを悟ると、黒井の大名は諦めて帰って行った。

炭が集まり、赤鯉退治が翌日に迫った十二月の十三日の夕方、大名の屋敷の前に托鉢僧が現れた。
柏原では十二月十三日は小豆飯にカラシ漬けを添えて食べるという習慣があったので、僧にもこれを振る舞った。
僧は小豆飯とカラシ漬けを平らげると、「赤鯉退治は中止した方がいい。さもなければお家が潰れるであろう」と言って、どこかへ立ち去った。
大名は二度も同じ忠告を受けたことを不思議に思ったが、今更止めるわけにはいかないと、赤鯉退治を予定通り行うことにした。

翌日、いよいよ赤鯉を退治する時がやって来た。
家臣や村人たちは、大量の燃えさかる炭火を一気に辺田の渕へと投げ込んだ。
あっという間に川の水は沸き立ち、まるで溶岩が流れ込んだような熱さになった。
しばらくすると、水面に大小様々な魚と共に、大きな赤鯉が白い腹を晒して浮き上がってきた。赤鯉退治は成功に終わった。
赤鯉の死体を岸に引き上げ、体に刃を入れて捌いていくと、胃袋の中から小豆飯とカラシ漬けが出て来た。
これを見た大名は、昨日の僧はこの赤鯉が化けたものだと気づき、家来に命じて死体を手厚く葬ったという。

『柏原の民話とうた』「赤鯉退治」より


柏原では鯉ですが、岩魚や鰻などが人間に化けて魚の殺生(乱獲)を止めろと忠告する、という話は各地に伝わっています。(『耳袋』『想山著聞奇集』『飛騨の伝説』など)
例えば『想山著聞奇集』には「川に毒を流して魚を獲ろうとすると僧が現れて止められるが、食べ物を与えて追い返す。その後、戒めを無視して毒を流すと大きな岩魚が獲れる。腹を捌くと先程の僧に与えた食べ物が出てくる。僧は岩魚が化けたものであった」という話があります。
丹波の赤鯉は僧だけでなく、蜘蛛や女にも化けることが可能だったようです。しかも人を襲って食べるという凶暴さも持ち合わせています。
ひょっとすると退治を止めに来た黒井の大名も、赤鯉が化けていたものだったのかもしれませんね。

愛宕山の芥子坊主

愛宕山の芥子坊主 (あたごやまのけしぼうず)


ある少女が早朝から愛宕山へ草刈りに出かけた。
一生懸命草を刈り続け、ふと向こうの方を見ると、遠くの方で芥子坊主(という髪型)の女の子が一人で遊んでいる。
どこの子供だろうと考えたが、全く見当がつかない。
その時、「愛宕山は色々なものに化けることが出来る」という話を思い出した。
あの女の子は、愛宕山が化けたものに違いないと思った。
怖くなった少女は走って逃げ、牛小屋の中に隠れていたという。

『丹後の民話 第一集 いかがのはなし』「愛宕山がこわかった」より


不思議な少女シリーズ。
ちなみに芥子坊主とは江戸時代の子供の髪型で、こんなの↓です。

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