丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2020年10月

歯抜け大坊主

歯抜け大坊主 (はぬけおおぼうず)


ある山の近くの家で起こった話である。
その家には夜泣き癖のある子供がいて、夜な夜な母親を困らせていた。
ある時、母親が「今晩は外で寝なさい」と言ってむずがる子供を暗闇の中へ放り出した。
とはいえ心配なので、母親は子供の様子を雨戸の隙間から覗き見ていた。
すると、どこからともなく身長3mもある歯の抜けた大坊主が現れ、「こっちへ来い、こっちへ来い」と子供を誘い出した。
それを見た母親は悲鳴を上げた。その声を聞きつけ、家中の者がその場へ集まって来た。
「大きな坊さんが……」と、母親が指さすのと同時に、大坊主は消えてしまったという。

『舞鶴の民話 第二集』「年老いたタヌキ(下福井)」より


前回紹介した“動く生首”と“歯抜け大坊主”は、山に棲む年老いた狸が化けたものだと考えられていたようです。

動く生首

動く生首 (うごくなまくび)


昔、上福井の村人が舞鶴座へ芝居を見に行った帰りのことだった。
人気の無い夜道を歩き、やがて下福井の近くまで来た時、黒く太いものが道一杯に落ちていることに気づいた。
提灯の灯りで確かめると、そこには若い女の生首が転がっていた。黒く太いものは女の長い黒髪だった。
だが先へ進むにはこれを跨いで行くしかない。どうしようかと考えていると、生首が二、三間(約3~5m)ほど上福井の方向へ動いた。
しばらくしてまた二、三間、上福井の方へ移動した。村人はその動きに合わせ、生首について歩いて行った。
そのまま坂を登ると数軒の民家が見えたので、村人は助けを求め玄関戸を叩いた。
すると、黒髪の生首はスーッと消えてしまったという。

『舞鶴の民話 第二集』「年老いたタヌキ(下福井)」より

高見の亡魂

高見の亡魂 (たかみのぼうこん)


天正七年(1579)、赤井氏の居城・高見城は明智光秀の火攻めを受け落城した。
城の兵士たちは炎に悶え苦しみ「水をくれ」と叫びながら死んでいったという。

やがて時代は下り、高見城の戦が人々の記憶から薄れていった頃、鴨野の谷川に見たこともないトンボの大群が飛ぶようになった。
透き通るような青味を帯びた胴体に柳の葉に似た羽根をつけ、微かな風にも吹き飛ばされる程弱々しい姿のトンボだった。その数は何十万匹にもなったという。
この群れを見た村人たちは、高見城の兵士がトンボに生まれ変わり、水を求めてやって来たのだと考えた。
そしていつしか、このトンボを“高見の亡魂”と呼ぶようになった。
村の子供たちはこのトンボを見かける度「高見の亡魂、水やるで、消えろ、消えろ」と言いながら、水をかけて追い散らすようになった。
だが現在は一匹も姿を見ることがなくなったという。

『柏原の民話とうた』「糸とんぼ」より


死者たちが虫に転生して戻って来る、という話は福知山市にも伝えられています。
大雲橋のカゲロウ


伝承地:丹波市柏原町鴨野


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