丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2021年10月

生首谷

生首谷 (なまくびだに)


昔、ある侍が日暮れに東掛から寺村(現・曽我部町)に抜ける一本道の谷間を歩いていた。
すると細い道の先に棒が立っており、女の生首が刺さっていた。
驚いた侍は道を駆け戻り、近くの家に飛び込んだ。
だが家の男に爛々とした目で睨まれたので逃げ出し、近くの村へ辿り着いた。
侍から事情を聞いた村人たちが確認に行くと、確かに女の生首があり、悪者に殺されたものだということがわかった。
以来、この谷は「生首谷」と呼ばれるようになったという。
また一説には昔、生首谷には鬼がいて、人間の首を引き抜いては谷に捨てていたとも言われている。

『丹波の伝承』「生首谷」より


伝承地:亀岡市曽我部町寺



川太郎

川太郎 (かわたろう)


是安では盆に海へ行くと、頭に皿を乗せた“川太郎”が出て来て肝を抜くと言われている。
また船で沖へ行くと、川太郎が舳先に喰らいついて「柄杓が欲しい」と言ってくる。
この時に柄杓を渡せば海水を注がれ、船ごと海底に引き込まれてしまうので、底の抜けた柄杓を貸さなければならないという。

『丹後町の民話 第二集』「盆の川太郎(是安)」より


舟幽霊の特徴が加わった河童の伝承です。
是安では河童と舟幽霊は同じものと考えられていたんでしょうか。


伝承地:京丹後市丹後町是安


歌唄い狸

歌唄い狸 (うたうたいだぬき)


昔、網野の塩江には化け上手の狸が棲んでいた。
この狸は夜になると綺麗な娘に化け、歌を唄いながら現れては村の若者を騙していた。
困った村人たちは相談の末、狸を封じ込めるために石地蔵を建立した。
すると、それ以来狸が現れることはなくなったという。
この地蔵は「歌うたい地蔵」と呼ばれ、周囲の木を伐れば足腰が立たなくなると伝えられている。

『ふるさとのむかしむかし』「歌うたい地蔵さん」より


塩江には人を騙す狸“引原ごんすけ”がいたようですが、こちらも石地蔵を建てられたことで住処を追われてしまいます。
石地蔵つよい。




オギンの亡霊

オギンの亡霊 (おぎんのぼうれい)


昔、新井の大西家にオギンという女がいた。
ある日、オギンは赤子を家に置いてオテノ山へ草刈りへ行ったが、急な斜面に足を滑らせ、滑落して死んでしまった。
その後、夜になるとオテノ山から降りてくる火の玉が目撃されるようになった。
それが何日も続いたある夜、亡霊となったオギンが家へ戻って来て、赤子が眠っている部屋を覗き込んだ。
すると、天井に吊ってある大きな桶の縄が切れ、その真下にいた赤子に直撃した。赤子は桶に押し潰され、死んでしまった。
人々はオギンが我が子を連れに来たのだろうと噂したという。

『語りによる日本の民話 10  丹後 伊根の民話』「子を迎えにくる母」より




天狗山の白いもの

天狗山の白いもの (てんぐやまのしろいもの)


山南町の青田集落の南には、天狗が棲むという「天狗山」があった。
室町時代、青田集落は未曾有の大干魃に見舞われ、村人たちは困窮していた。
そんな中、権太という男が命を賭して天狗に掛け合い、雨を降らせてもらおうと考え、天狗山に登った。
権太は山頂に聳え立つ大岩まで来ると、その上で座禅を組んで天狗の出現を待つことにした。
ふと気づくと、白いものが木々の間を移動しながら権太に迫って来ていた。
白いものは権太に近づくと勢いよく飛びかかり、体に齧りついた。
権太は為す術もなく齧られ、全身から血を流して絶命した。
すると、にわかに空が曇り出し、激しい雨が降り始めた。豪雨は一昼夜降り続いたという。
その後、雨によって救われた村人たちは犠牲になった権太の霊を慰めるため、大岩を「天狗岩」と名付け、奥に弁財天を祀ったという。

『上久下村誌』「青田の天狗岩」より


囓ってくる天狗って面白いですね。
まぁ白いもの=天狗かどうかわかりませんが……。

ちなみに天狗岩は現存しているそうです。




狼薬

狼薬 (おおかみぐすり / ろうやく?)


久美浜湾東の神崎集落には、家伝の秘薬を売る大家と呼ばれる家があった。
大家の薬は婦人病に効くということで、遠方から買いに来る者も多かったという。
この薬については、ある言い伝えが残されている。

昔、犬に似た動物が大家の縁の下へ潜ったのを見たという者がいた。
それを皮切りに、何人もの村人が縁の下に潜る動物を見たと言うようになった。
この噂を聞いた家主は物干し竿を縁の下へ入れて探ってみたが、何も出て来なかった。
翌朝、家主の元へ一人の老婆が現れ、
「私は狼だ。私の眷属が長い間縁の下に棲まわせてもらっていたが、人々に知られてしまったからには出て行かなくてはならない。お世話になった礼に薬の製法を教えたい」
そう言って、家主に薬の製法を教えた。
老婆の教え通りに作ってみると、婦人病に効果のある薬が出来た。
狼に教えてもらった薬は評判となり、「狼薬」と呼ばれるようになったという。

『丹後の伝説 ふるさとのはなし』「狼薬」より




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