丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2022年04月

金玉を握るお化け

金玉を握るお化け (きんたまをにぎるおばけ)


昔、ある墓地にお化けが出るという噂があった。
それを聞いた若者たちが墓地へ肝試しに向かい、お化けが出るのを待っていた。
すると石碑に腰かけていた男が他の仲間に、
「皆、何があっても誰か一人を見捨てて逃げるようなことはしないでおこう」と言った。
何故なら、お化けがその男の尻の下から手を伸ばし、彼の金玉を握っていたからである。

『みやづの昔話 -北部編-』「肝だめし」より


男はお化けに大事な部分を掴まれて動けない状況下にあったので、自分を置いて逃げないよう仲間に言い含めたんですね。
話はここで終わっているので男がどうなったのかはわかりませんが、無事だと良いですね。主に金玉が。

ちなみに、お化けに金玉を握られる話はお隣の兵庫県美方郡にも伝えられており、こちらは金玉握られ後の話も書かれています。

ある夜、三人の男が幽霊が出るという場所に行き、石に腰かけて待っていた。
不意に真ん中の男が「今夜はどんなことがあっても仲間を見捨てて逃げないようにしよう」と言い出した。
他の二人が同意すると、真ん中の男は「実はさっきから冷たくて軟らかいものが俺の金玉を掴んでいて、体を動かすことが出来ないんだ」と言った。
見ると、土の中から白い手が出て、男の股の中に入っていた。
二人は驚き、男を置いて逃げて行った。
一人残された男は、覚悟を決めて金玉を握るものに話しかけた。
すると顔中に切り傷を負った血塗れの女の幽霊が現れ、「私は村の長者に親を毒殺され、私自身も惨殺されてこの地に埋められた。仇を討ちたいが、長者の家の関札が邪魔で入ることが出来ない。どうか札を取ってくれないか」と頼んできた。
男が請われた通りに関札を取ると、幽霊は長者の家へ入り一家を皆殺しにした後、お礼に小さな青い玉(翡翠の玉)を渡し、姿を消した。
その後、男は幽霊から貰った玉を寺へ納め、無縁仏を弔ったという。
(『全国昔話資料集成 27 但馬昔話集』『但馬・温泉町の民話と伝説』)


伝承地:宮津市松尾


火事を防いだ狛犬

火事を防いだ狛犬 (かじをふせいだこまいぬ)


ある時、十倉の庄屋の夢に山崎神社の狛犬が現れ、「熱い、熱い」と言った。
翌日村人から話を聞くと、昨夜乞食が神社の境内で焚き火をしていたところ、火が狛犬の前足に燃え移ったという。
だが神社への被害は少なかったことから、これは狛犬の足が火を防いだのだと考えられた。
その後、狛犬の前足は作り変えられ、現在は草履を履いているという。

『わが郷土 まぐら』「山崎神社」
『舞鶴の民話 第三集』「一宮のこま犬(十倉)」より


山崎神社は元々真倉地域の氏神だったらしいのですが、洪水によって十倉まで流されてしまったため、同地で祀るようになったと伝えられています。
また「鱒が洪水で流された神社を背負って十倉まで昇ってきた」という伝承があり、山崎神社に参詣する時は(あるいは一生)鱒を食べてはならないと言われています。

ちなみに神の眷属が火事を防いだという話は舞鶴市の他、伊根町や丹波篠山市にも伝えられています。
火事を防いだ稲荷(伊根町)


山崎神社
山崎神社。一宮神社とも呼ばれています。

火事を防いだという狛犬
火事を防いだのは本殿に向かって右側の狛犬だそうです。草履履いてないような……?


伝承地:舞鶴市十倉・山崎神社


奥山の毒蛇

奥山の毒蛇 (おくやまのどくへび)


西本梅村天引の奥山には胴回りが二尺(約60cm)もある大蛇がいる。
この大蛇に毒の息を吹きかけられると、たちまち震え上がって死んでしまうという。
そのため、蛇が出る夏には誰も奥山へ行かないという。(『丹波の伝承』)

『園部町の口碑、伝承おじいさんたちの話』にも同じ話があり、これには更にエピソードが追加されています。

(*前半部分は『丹波の伝承』↑と同じ)
昔、ある木樵が妻子と共に奥山の谷川で洗濯をしていると、大蛇が現れて妻と子供をさらって逃げようとした。
それを見た木樵は大蛇を鎌で斬りつけたが逃げられてしまった。
その後、木樵は悲しみのあまり死んでしまったという。

『丹波の伝承』「奥山の毒蛇」
『園部町の口碑、伝承おじいさんたちの話』「奥山の毒蛇」より


伝承地:南丹市園部町天引


女に化けた蛇

女に化けた蛇 (おんなにばけたへび)


昔、ある庄屋の家に美女が訪れ、一泊の宿を求めた。
それをきっかけに二人は夫婦となったが、女を嫁にしてから蔵の米の減りが異様に早くなった。
そこで庄屋は外出すると偽って天井裏に隠れ、妻の様子を盗み見ることにした。
すると妻は大量の米を炊き、幾つもの握り飯をこしらえていった。
そんなに沢山の握り飯をどうするのかと見ていると、妻の頭が「ペギイ」と開いた。
妻は、首から下は人間だが、頭は大きな財布になっていた。
妻は頭の蓋を大きく開き、その中へ次々と握り飯を放り込んでいった。
握り飯を全て頭に投げ入れると、妻は大蛇に変化し、大きな腹を見せて眠りについた。

その夜、妻を恐れた庄屋は、彼女を遠ざけて別の部屋で眠っていた。
正体を見られたことに気づいた妻は彼を喰ってしまおうと考え、眠る庄屋を樽に詰めて山へ運んだ。
だが庄屋は途中で目を覚まし、大きなふくら柴(ソヨゴ)に掴まって外へ逃げると、代わりに石を樽に詰め込んだ。
そしてふくら柴の木に登って妻を見ると、美しかった妻は大きな蛇男に変化していた。
蛇男になった妻は庄屋と石が入れ替わったことに気づかないまま、樽を背負って津母の蛇池の方へ消えていった。
その後、庄屋は自分を助けてくれたふくら柴を祀ったという。

『語りによる日本の民話 10 丹後 伊根の民話』「女に化けた蛇」より


『日本昔話名彙』や『日本昔話大成』で言うところの「食わず女房」タイプの話です。
妻の頭が財布になっているというのが面白いですね。
イメージとしては頭頂部ががま口のようになっていてパカパカ開閉出来る、という感じでしょうか。


伝承地:伊根町津母(新井?)


双六を打つ幽霊

双六を打つ幽霊 (すごろくをうつゆうれい)


丹波亀山の大森彦五郎という侍には美しい女房がいたが、彼女は出産の際に死んでしまった。
それから三年後、一族の勧めにより彦五郎は再婚した。
新しい女房はよく出来た妻で、死んだ前妻のために毎日回向を続けていた。
前妻は双六が好きで、生前は幼い頃から彼女に仕える腰元といつも双六を打っていた。
そして死後も夜な夜な現れ出ては腰元と双六を打っており、それは三年も続いていた。
ある夜、腰元は前妻の幽霊に「こうして毎夜双六を打ちに現れていることが家人に知られたら、嫉妬で迷い出たのだと思われてしまいます。ですから、もう今夜限り来ないで下さい」と言った。
すると前妻は「確かに。まさか双六に執心があって出て来ていると人は思わないだろう。今夜を最後にもう来ないことにする」と言って帰っていった。
後に腰元が彦五郎夫婦に前妻のことを告げると、二人は双六の盤をこしらえ、彼女の墓に供えて懇ろに弔ったという。

『諸国百物語』「大森彦五郎が女ばう死してのち双六をうちに来たる事」より


伝承地:亀岡市


消える蝋燭

消える蝋燭 (きえるろうそく)


ある夜、村人が提灯を掲げて下福井の辺りを歩いていると、不意に火が消えた。
不思議に思い提灯を見ると、中の蝋燭がなくなっていた。
仕方なく近所に住む知人から蝋燭を貰ったが、また途中で火が消えて蝋燭がなくなった。
村人は狐狸の仕業かと怖くなったが、「ついてこい!」と覚悟を決め、別の知人から貰った蝋燭を灯して歩き出した。
すると今度は火が消えることも蝋燭がなくなることもなく、目的地まで辿り着けたという。

『福井百年誌』「妖怪篇 -福井の伝説-」より


伝承地:舞鶴市下福井


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