丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2022年06月

川の主

川の主 (かわのぬし)


昔、ある男が京から福知山へ帰る途中、桂橋に立つ美女に「どこまで帰るのか」と尋ねられた。
男が「福知山まで」と答えると、女は手紙を出し「これを千代川村(亀岡市)の川関に投げ込んでほしい」と頼んだ。
男は手紙を受け取ったものの、川に投げ入れることに納得がいかず、途中で中身を検めた。
手紙には「この間はご馳走になりました。ちょうど良い人間が見つかりましたので、お約束通り差し上げます。桂川の主より。大堰川の主様へ」と書かれていた。
もしこの手紙を川に投げ込んでいれば、大堰川の主に喰われていただろう。
男は命拾いしたことを喜びつつ帰ったという。

『口丹波口碑集』「川の主」より


昔紹介した舞鶴市の“由良の浜姫”と同じく、「水の神の文使い」(『日本昔話名彙』)や「沼神の手紙」(『日本昔話大成』)タイプの話です。
詳しくは由良の浜姫の記事で書いていますのでよければご覧下さい。

伝承地:京都市右京区・桂橋/亀岡市千代川町川関(大堰川)




元伊勢の松

元伊勢の松 (もといせのまつ)


ある時、元伊勢の神社の大きな松を伐ることになった。
通常、神社の木を伐る時は、神主が神に伺いを立ててから伐倒するものだが、それを行わずに伐り始めた。
ところが木樵が斧を入れても、翌日になると伐った部分の木くずが集まって元の状態に戻っていた。
そんなことが何日も続くので、結局その松を伐り倒すことは出来なかった。
これは元伊勢の神が松を惜しがり、伐らせないようにしていたのだという。

『みやづの昔話 -北部編-』「大木の秘密」より


福知山市大江町の元伊勢には内宮(皇大神社)と外宮(豊受大神社)がありますが、この話の松がどちらのものなのかは言及されていません。
また元伊勢神社内宮には、節分の夜に「龍灯」が灯る不思議な杉の話があります。

伝承地:福知山市大江町内宮or外宮


狐のあたん

狐のあたん (きつねのあたん)


昔、ある人が山で狐が隠しておいた山鳥を盗んで食べた。
ところが狐に化かされており、山鳥だと思って食べたものは赤子だった。
これは狐にあたん(復讐)されたのだという。

『ふるさと口丹波風土記』「狐のあたん」より


盗んだ方も悪いけど狐もえげつない……。


伝承地:京丹波町豊田


小豆洗い / アズキ洗い

小豆洗い / アズキ洗い (あずきあらい)


春日町広瀬の大原神社から公民館への道の途中に川が流れており、その堤防に「ハチクヤブ」と呼ばれる竹藪があった。
夜にそこを通ると「小豆三升、米三升、合わせて六升、ガシャガシャ、ガシャガシャ」と言って“小豆洗い”が出ると恐れられていた。

氷上町横田から本郷への道の途中に「八の坪」という田圃があり、夜に近くを通ると「ザザーザザー」と小豆を洗うような音がすることがある。
これは“アズキ洗い”の仕業だと言われている。


『大路に伝わる言い伝え・昔話』「狐や狸に化かされた話」
『生郷村志』「アズキ洗い」より


伝承地:丹波市春日町広瀬、氷上町横田~本郷




磯葛島の大蛇

磯葛島の大蛇 (いそかずらじまのだいじゃ)


葛嶋神社は昔、磯葛島(小橋集落の北にある無人島)の宮代谷という所にあり、祭の日は舟に乗って神社へ参詣していた。
祭事は代々小橋村の庄屋が神器の「柳のまな板」と「金のまな箸」を使って執り行っていた。
ある年の祭礼の日、急用で不在の父に代わり、庄屋の息子が祭事を行うことになった。
村人の助けもあり、祭は無事に終わったが、息子は二つの神器を島の神社に置いたまま帰って来てしまった。
磯葛島には「一度島を離れたら同じ日に再び島へ上がってはならない」という掟があった。
だが神器を置いたままでは祭は失敗に終わる。そこで息子は禁を破って再び島へ戻ることにした。
母や村人たちも「神様もわかってくれるに違いない」と息子を励まして送り出した。
息子は再び島に上陸すると、神社から忘れ物の神器を取って舟まで運び出した。
するとその時、急に空が曇り始め、雷鳴が轟き渡った。
そして神社の辺りから、口から火を吹き、大鏡のような眼を光らせた大蛇が現れた。
たちまち海は荒れ狂い、息子が乗る舟は大波にさらわれて海中に呑み込まれた。
小橋の浜から様子を見ていた母は、悲しみのあまり海に身を投げたという。
村人たちは「神様ながら、あまりの仕打ち」と嘆き、それ以来磯葛島への参詣を行わなくなった。
参詣者がなくなった葛嶋神社の社殿は年月と共に朽ちて行き、やがて崩落してしまったという。

『わが郷土 丸山小学校創立百周年記念誌』「“庄屋の息子と大蛇”-小橋-」
『舞鶴の民話 第一集』「庄屋の息子と大蛇(三浜)」より


「柳のまな板」と「金のまな箸」を使って行われる神事、どんな内容だったんでしょう。
ちなみに『舞鶴の民話 第一集』によると、葛嶋神社は後に小橋村の氏神(小橋神社?)の隣に再建されたそうです。


伝承地:舞鶴市小橋・磯葛島


女に化けた狐

女に化けた狐 (おんなにばけたきつね)


昔、平の若宮神社に美男の堂守りが住んでいた。
ある年の正月十四日の夕方、黒髪の美少女が神社を訪れて一泊の宿を求めた。
堂守りは女のあまりの美しさに驚いたが、雪の夜に放り出すわけにもいかず、彼女を泊めることにした。
その夜、堂守りが女に食事を振舞ったところ、不思議なことに御櫃の中の米は少しも減らなかった。
そして夜が更け、床に就こうとしたが寝具は一組しかないため、二人は同じ布団で眠ることになった。
堂守りが布団の端で身を固くしていると、女の柔らかな黒髪が顔を撫でた。
するとたちまち、堂守りの体は暖かくなっていった。
堂守りが初めて味わう暖かさに感動していると、女の暖かい息が首筋に流れた。
その心地よさに、堂守りはいつの間にか深い眠りに落ちていた。
翌朝、堂守りが目覚めた時には既に女の姿はなく、彼女の温もりだけが残されていた。
布団の上には狐の毛が落ちており、土の足跡が裏山の奥へと続いていた。
堂守りは狐に化かされたことに気づき、村人に昨夜の出来事を話した。
話を聞いた村人たちは「人を化かす狐や化け物は退治しなければならない」と言って狐狩りを始めたという。
以来、正月十四日の夕方になると、村中の男子が武装して若宮神社の方へ進み、
「明日は地蔵堂のまつりとて キツネ狩り ウォーッ ウォーッ キツネ泣きゃ テン泣く 泣くキツネ とりおさえろ」
という声を上げながら村を一周するようになったという。

『舞鶴の民話 第二集』「きつねがり(平)」より


伝承地:舞鶴市平・平八幡神社?


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