夜鳴石 (よなきいし)
昔、大島村にお冬という娘がいた。
彼女は月に数回、対岸の村から舟でやって来る若い船頭に心を寄せていた。
ある日、船頭はいつものように大島村での仕事を終え、対岸の村に帰る準備をしていた。
お冬は船頭を見送るため磯辺に出たが、そこで海に突風が吹く前兆を感じた。
急いで船頭の元へ行き「今日はこれから突風が吹くから舟に乗ってはいけない」と忠告したが、船頭は彼女の言葉を聞かず帰って行った。
お冬は磯の岩の上から遠ざかる舟を見送ることしか出来なかった。
そして舟が沖まで進んだ時、海上に突風が吹き、船頭は舟もろとも波に飲み込まれてしまった。
それを見たお冬はショックのあまり気を失い、岩の上から海へ転落し、化石となって磯に埋もれた。
以来、台風が来る前には磯から寂しげな鳴き声が聞こえるようになり、漁師たちもその日は海に出なかったという。
お冬の化石は海中深く沈んだのか、護岸工事で破壊されたのか、今はその行方を知る者もいない。
『宮津の民話 -ふるさとのむかしばなし- 第一集』「夜鳴石」より
伝承地:宮津市大島