丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2022年10月

盥取橋

盥取橋 (たらいとりばし)


富本村西田に“盥取橋”と呼ばれる橋がある。
昔、ある人が町で買ったばかりの盥をこの橋に置き、用を足していた。
するとその間に盥がなくなっていたという。

『口丹波口碑集』「吉川橋」より


伝承地:南丹市八木町西田


井尻の狼

井尻の狼 (いじりのおおかみ)


昔、井尻に一軒の農家があったが、老婆を残して家族全員が死に絶えた。
それから家に一匹の狼が棲み着くようになり、老婆は恐怖心から狼に食べ物を与え、共に暮らすようになった。
ある時、旅の老僧が老婆の家を訪ね、狼を見て「何故狼を養っているのか」と聞いた。
すると老婆は「家族が死んだ後、狼が居着くようになったのだ」と涙ながらに語った。
話を聞いた老僧は「私に任せなさい」と言って一巻の経を読んだ。
すると不思議なことに、狼の姿は消え失せた。
老僧は狼の犠牲になった人々の供養碑を建てることを勧め、去っていった。
村人たちは人を襲う狼が消えたことを喜び、老僧の言葉に従って供養塔を建立したという。

『檜山村誌』「恵長の供養塔(井尻の狼)」より


『京都 丹波・丹後の伝説』では、老婆は独居の寂しさから狼と暮らす→だが狼は人間に子供を殺された恨みから、家の近くを通る者を喰い殺して報復する→それを知った老婆は泣く泣く狼を銃殺し、供養塔を建てて行方をくらます……という話になっています。


狼塚
井尻の裏路地にある
狼塚(供養塔)。
表面には「奉納大乗妙典扶桑廻國供養 願主恵長」と彫られています。


伝承地:京丹波町井尻(Googleマップに狼塚の位置が載っていますが、実際はもう少し西の方にあります)



大白竜

大白竜 (だいはくりゅう)


真倉の稚児ヶ滝不動明王(真倉不動)は、昭和初期に神戸の行者・田中真栄が修行をし、各地に信仰を広めた場所と伝えられている。
ある日、真栄が稚児ヶ滝で修行をしていると、眼前に大白竜が現れた。
真栄が「何者だ! 力の程を見せよ!」と一喝すると、その瞬間、樫の大木が倒れお堂が潰されてしまった。
その後、真栄は病を患い死亡したという。
また、七月二十八日の例祭日には、稚児ヶ滝の祠にお使いの大きな白蛇が姿を現すという。
真倉不動に願をかけて加護を得た人は、必ずこの白蛇を見ると言われている。

『わが郷土 まぐら』「真倉不動(ハシ谷)」
『中筋のむかしと今 下』「真倉不動」より


現在は失われていますが、かつて真倉不動には御神体として白鞘の刀が納められていたそうです。
この刀は何度も盗難に遭っていましたが、持ち去ろうとすると参道の途中で体が動かなくなってしまうため、どの盗人も「刀の祟りだ!」と怖がり、通行人に刀を託して逃げたと言われています。
また、滝の水と小石を持ち帰り、水をイボに塗って小石で擦れば治るという話もあります。


伝承地:舞鶴市真倉・稚児ヶ滝不動


章魚引松

章魚引松 (たこひきまつ)


昔、宮津の阿蘇海に巨大な章魚(タコ)が棲んでいた。
だが寿命が尽きたのか、ある日章魚は屍となって海面に浮かび上がった。
章魚は頭だけで六畳敷(約10㎡)以上の大きさだったので、簡単には陸へ引き上げられなかった。
そこで村人たちは海岸に立つ大きな松の梢に轆轤を取りつけ、綱を使って引き上げたという。
以来、その松は“章魚引松”と呼ばれるようになったが、明治末頃に伐り倒されてしまった。

『郷土と美術』昭和十六年一月号「橋立の名松」より


伝承地:宮津市文殊の海岸付近


鳴岩

鳴岩 (なるいわ)


額田集落の外れ、国道9号線沿いの山手に、壁のよう大岩がそびえている。
現在は半分以上が地中に埋まっているが、かつては高さ10m以上の大岩が、国道に覆い被さるようにしてせり出していたという。
雨の夜にこの道を通ると、岩が「ゴーッ」と音を立てるため、村人から恐れられていた。
村人はいつしかこの岩を“鳴岩”と呼ぶようになり、難除けに地蔵や五輪塔を建てて祀るようになったという。

『上夜久野村史』「鳴岩」
『夜久野町史 第一巻(自然科学・民俗編)』「鳴岩(額田旦)」より


『上夜久野村史』では、岩の音は「雨の夜は近くを流れる川(牧川)の水量が増すため、普段よりも大きくなった水音が岩に反響して、あたかも岩が鳴っているように聞こえるのではないか」という考察がされています。


鳴岩
国道9号線の横にそびえる鳴岩。
上部が草木に覆われているのでわかりにくいですが、かなり大きい岩のようです。
足元には沢山の地蔵と題目塔が祀られていました。
鳴岩は額田集落の外れにあるので、塞の神的な役割を担っていたのかもしれませんね。


伝承地:福知山市夜久野町額田


屋根をめくる狐

屋根をめくる狐 (やねをめくるきつね)


吉兵衛という男が家に帰る途中、道のそばで眠る大きな狐を見つけた。
狐は驚いて逃げていったが、寝ていた所に丸い玉が残されており、吉兵衛はその玉を拾って帰った。
その夜、吉兵衛が眠っていると、外から「吉兵衛さん、今日拾った玉を返して下さい」という声が聞こえた。
だが吉兵衛が断ると、声は「返してくれないなら屋根をめくるがそれでも良いか」と脅してきた。
吉兵衛は「めくりたければいくらでもめくれ」と言い捨て、再び眠りについた。
すると上からガサガサと屋根草をめくる音が聞こえ、大穴が空いて吉兵衛の所から夜空の星が見えるようになった。
怒った吉兵衛は「そんなに欲しいなら持っていけ」と玉を外に放り投げ、そのまま眠りについた。
翌朝、外に出て確認すると、屋根のどこにも穴は空いていなかったという。

『丹後の民話 第二集 ふるさとのむかしばなし』「きつねの玉を拾った男」より


伝承地:京丹後市網野町

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