丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2023年04月

転居した毘沙門天

転居した毘沙門天 (てんきょしたびしゃもんてん)


公庄村の寺谷という所に毘沙門天を祀る無住の古寺があったが、手入れされないまま放置され荒れ果てていた。
ある大雪の夜、この寺の毘沙門天が村人の夢枕に立ち「私は村の者に見放されたらしい。居づらくなったので今は郷の明光寺に来ている。たとえ迎えに来てももう帰らんぞ」と言った。
翌日、古寺に行って確認すると、毘沙門天の姿はなく、雪の上に人のものではない足跡が点々とついていた。
足跡は郷集落の明光寺まで続いており、本堂には古寺の毘沙門天があった。
村人たちは驚いたが、背負って帰るわけにもいかず、そのまま明光寺に祀ってもらうことにしたという。

『丹後の伝説 ふるさとのはなし』「かってに転居された仏様」より


伝承地:京丹後市網野町公庄

二人連れの美人


二人連れの美人 (ふたりづれのびじん)


ある夜、大井村の村人が亀岡町まで買い物に出て、前川堤のそばの道を歩いて帰っていた。
村人が堤の中程にある一本松まで来た時、二人連れの美人に「夜道なので一緒に歩いて下さい」と声をかけられた。
三人は連れ立って歩いていたが、一本松の先にある石地堂まで来ると、彼女たちはずんずん稲田の中へ入って行った。
後に村人は「あれは狐に違いない。もしうっかり稲の中に入ろうものなら、いい物語りにされるところだった」と語ったという。

『口丹波口碑集』「狐の話」より


伝承地:亀岡市大井町並河


異形の子

異形の子 (いぎょうのこ)


享保十七年(1732)四月十七日、丹波国福知山長町の善六という男の女房が“異形の子”を産んだ。
頭は犬に似ているが、耳は人のようで、手足には水かき、甲羅と羽根があった。
そして額に角が生え、口からは二本の牙が出ていたという。

『月堂見聞集 巻之二十五』より


伝承地:福知山市長町(現・東長&西長)


梨の木の狼

梨の木の狼 (なしのきのおおかみ)


ある秋の夕暮れ、宮村の大工が土師川沿いの梨の木という所で狼の群れに遭遇した。
大工は木に登って避けようとしたが、狼たちは一匹、また一匹と背中に乗り、櫓を組むように重なり合って登ってきた。
大工はたまらなくなり、玄翁で一番上の狼の頭を殴りつけると、狼は落下して土師川まで転がった。
それを見た他の狼たちは驚き、櫓を崩してどこかへ逃げて行った。
狼の難を逃れた後、大工は自宅へ戻ったが、夜なのに家の戸は開いたままで、いつも出迎えてくれる妻の姿も見当たらなかった。
行燈に火を灯すと、妻の手拭いを被った黒いものが物凄い勢いで外へ飛び出した。
急いで布団をめくると、妻は既に冷たくなっていて、辺りには狼の毛が散らばっていた。
大工は嘆き悲しみ「年中、山の木を伐っていたから山の神の罰が当たったのだ」と考え、祠を建てて山の神を祀ったという。

『福知山の民話と昔ばなし集』「梨の木の狼」より


いわゆる「千疋狼」系の話ですが、狼のボス的存在は出ず、また妻を殺された原因も「山の神の罰だ」という内省的な結論になっています。

丹後地域に伝わる千疋狼系のお話。


伝承地:福知山市三和町芦渕


赤土びん

赤土びん (あかどびん)


ある寺の藪の古椿に「土びんがさがる」という噂があった。
これは狸の仕業だということで、夜に和尚が椿の元へ行くと、確かに赤土びんが下がっていた。
そこで和尚は「うまく化けたな。だが大入道には化けられないだろう」と挑発した。
すると赤土びんは消え、代わりに大入道がにょきっと現れた。
「なかなかうまく化けた。だが茶釜は難しいだろう」と更に煽ると、大入道は茶釜になった。
そして和尚に要求されるまま、箸、下駄、杓子と次々に変化していった。
更に和尚が「今度は火つけ木に化けてみろ」と言うと火つけ木になったので、袋の中に放り込み寺へ持ち帰った。
それ以来、古椿に「土びんがさがる」という噂はなくなったという。

『ふるさとのむかしむかし』「赤どびん退治」より


火つけ木に化けた狸は燃されてしまったんでしょうか。

網野町や大宮町にも、土びんや赤茶びんがさがる話があります。


伝承地:京丹後市網野町木津


アズキアライ

アズキアライ


長谷の外れにある竹藪は“アズキアライ”が出ると言って怖がられていた。
そのため、夜にここを通る時は提灯の灯りを消し、四方を窺いながら小走りで進んだという。
アズキアライは水辺でサラサラと小豆を洗うような音を立てる妖怪だが、その正体は風で竹の葉が擦れ合う時に鳴る音ではないか、と言われている。

『近畿民俗』136,137号「丹波美山の言葉と民俗」より


小豆洗いシリーズ南丹編。
アズキアライも怖いけど、灯りを消して真っ暗闇の中を進むのも怖いような……。


伝承地:南丹市美山町長谷


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