ぐいんさん
昔、大内の和平という男が土師の江戸ヶ坂で昼飯を食べていると、黄衣をまとい羽根団扇を持った“ぐいんさん”が突然現れた。
ぐいんさんは「働き者の和平に褒美として名所を見物させてやる。この団扇に乗って目を瞑れ」と言った。
和平は言われた通りに団扇に乗ると、ぐいんさんと共に空高く飛んで行った。
そして和平とぐいんさんは、宮津の成相寺や天橋立、舞鶴の松尾寺などの名所を上空から見物した。
しばらく名所巡りをした後、ぐいんさんは「一度家に帰って皆を安心させてこい。そうしたらすぐに戻ってくるんだよ」と言い、和平を大内の近くの山に降ろした。
和平は走って家に戻ると、心配して集まった村人たちに「ぐいんさんが待っとるから」と言って再び出かけようとした。
そこで村人たちは和平を縛って動けなくすると、神棚に灯明を灯し一斉に千巻心経を唱えた。
すると和平は次第に落ち着きを取り戻し「わしは夢の世界に行っていた。もう山へは帰らん」と山行きを断念した。
だがその後も和平は空を飛んだ時のことが忘れられず、江戸ヶ坂でぐいんさんに出会った時の服装で一生を終えたという。
『福知山の民話と昔ばなし集』「お空を飛んだ和平さん」より
ぐいんさんとは天狗のことで、「ぐいん」は「狗印」と書くそうです。
伝承地:福知山市土師・江戸ヶ坂
