丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2024年06月

袖神さん

袖神さん (そでがみさん)


広田の旧道に拝天社という小さな祠がある。
祭神は菅原道真とも、大黒天とも、村山明神(拝天社の南にある村山神社の神)の母神とも伝えられている。
昔、ある勅使が村山神社へ詣る時、輿に乗ったまま拝天社の前を通ろうとした。
すると、拝天社の神が現れ「どうして我が社の前で下車しないのか」と怒り、勅使の袖を引き留めたという。
このことから、拝天社は袖摺の宮、袖取の社、袖ふりの社、かき取の社、広田大明神などと言われ、今は“袖神さん”と呼ばれている。
また、拝天社の前の坂で転べば三年以内に死ぬが、衣服の片袖を捧げれば難を逃れられると伝えられており、袖の代わりに紙で作った小さい袖形を供えることもあったという。

『新編 桑下漫録』「拝天社(袖摺の宮)」「袖神さん」より



拝天社
拝天社(平塚神社とも)は篠町広田の小路を入った先に鎮座しています。
割とシンプルな社ですね。


社前の坂道
社の前には「転ぶと三年以内に死ぬ」と伝わる坂道があります。
(赤い鳥居の先が拝天社)
ちなみに、京都市の清水寺参道の産寧坂も「転んだら三年以内に死ぬ」という言い伝えがあり、転んでも死なない御守りとして瓢箪を売る店が出来たりしたそうです。(『京都の伝説』)


その他「特定の場所で転んだら着物の袖を供える」系の伝承。


伝承地:亀岡市篠町広田・平塚神社


ヨコズチ

ヨコズチ


芦生には槌に似た太短い蛇のような動物がいるという。
芦生ではそれを“ヨコズチ”と呼ぶが、「ツチノコ」「ノズチ」など地方によって名称が異なるという。
ヨコズチは毒を持っており、移動する時は玉のようになって物凄いスピードで動くという。
実際に姿を見た人はいないが、「死んだお爺さんが「原生林のヒツクラ谷の奥で見た」と言っていた」というような話は多く残されている。

『京都の秘境・芦生 -原生林への招待-』「山の不思議と謎の動物」より


他の地域のツチノコ。


伝承地:南丹市美山町芦生


狐の祟り

狐の祟り (きつねのたたり)


豊田の大榎橋の河川敷に稲荷の祠があり、夜な夜な狐が現れていた。
ある人がこの狐を捕獲しようと、鼠の天ぷらを餌におびき寄せ、姿を見せたところを銃で狙い撃った。
するとその人は瞬時に失明してしまったという。

『丹波町誌』「狐にたたられた話」より


伝承地:京丹波町豊田


大山の明神さん

大山の明神さん (おおやまのみょうじんさん)


昔、門垣の村人が大山の森で仕事をしていると、首に白い輪の模様がある小蛇が現れ、彼を睨みつけた。
村人は気味悪く思い、斧で打ったところ、傷を負った小蛇は草むらに消えた。
翌朝、波の音に目を覚ました村人は外を見て驚いた。
山麓の小高い所に建つ彼の家まで白波が押し寄せ、村は湖と化していたのである。
見れば口が箕程もある大蛇が、山から山へ延々と身を横たえ、谷を塞いでいた。
その大蛇の首には、昨日の小蛇と同じ白い輪の模様があった。
村人たちは恐れ戦き、この蛇を産土神として祀ることを誓うと、やがて水は引き、村は元の姿に戻ったという。
その後、大山の滝のそばに藁屋根の小さな祠が建てられ、毎年四月八日の例祭日に屋根を葺き替える習わしとなった。

『上夜久野村史』「大山の明神さん(副谷門垣)」より


明神さんの祠は毎年四月八日に屋根の葺き替え作業が行われていましたが、昔は藁屋根をめくると首に白い輪の模様のある小蛇が二、三匹いることがあったそうです。


伝承地:福知山市夜久野町直見


乳神

乳神 (ちちがみ)


見内の奥に“乳神”と呼ばれる岩がある。
この岩は乳の出ない母親に霊験があると伝えられ、子供のよだれかけや着物が供えられている。

伝承①
昔、見内の奥山に赤子が捨てられ、母を呼び乳を求めて泣き叫んでいた。
すると近くにあった岩の裂け目から乳が出始め、赤子はそれを飲んで育ったという。
今もその岩には乳が流れたような白い跡が残っている。

伝承②
昔、ある村人が丹波へ通じる山道の奥で木を切っていた。
すると、天から美しく気高い姿の天女が雲に乗って降りて来た。
天女は岩の上で胸をはだけて乳を搾ると、やがて雲に包まれて天国へ昇って行った。
それ以来、その岩を“乳神”として祀るようになったという。

『郷土史「我が郷土」池内』「乳神」より


池内地区の広報誌『ふるさと池内探検隊ニュース 第6号』によると、乳神の岩は峠にあって参拝が大変なので、代わりに麓の池ノ内下公民館の横に弁財天として祀ったそうです。


弁天(乳神)社
池ノ内下公民館横の弁財天(乳神)社。
妙見社・天王社・大川社と共に祀られています。
(弁財天の社は右から二つ目)


ちゝ神
弁財天社のアップ。
札には「ちゝ神」と書かれています。
七福神繋がりなのか、中には恵比寿、大黒天、布袋の像が奉納されていました。


向かい合う社
弁財天社の前には山の神社と稲荷社があり、三つの社が向かい合うような形で祀られています。
(左が稲荷社、中央が弁財天社他、右が山の神社)
何だか面白い配置ですね。


伝承地:舞鶴市池ノ内下(乳神の岩の位置は不明。丹後峠の奥?)


影を飲むじゃたゃあ

影を飲むじゃたゃあ (かげをのむじゃたゃあ)


昔、ある老婆が大滝の近くの山で木を切っていた。
するとどこからともなく生温いような気配がして、自分の影の上を何かが動いているように見えた。
不思議に思い樹上を見ると、大きな「じゃたゃあ(蛇)」が木に巻きついてペロペロと舌を出していた。
驚いた老婆は走って家に帰り、青ざめた顔で何も言わずうんうんと唸っていた。
そして「大滝でじゃたゃあに影を飲まれた」と言って死んだ。
今も大滝にはじゃたゃあがいるという。

『丹後町の民話 第二集 -ふるさとのむかしばなし-』「じゃたゃあに影を飲まれた」より


「じゃたゃあ」の発音が難しい……。

堤に棲んで人の影を食べる妖怪。


伝承地:京丹後市丹後町小脇


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