風ヶ鼻峠の狐 (かぜがはなとうげのきつね)*
昔、大山の平井集落に寅さんという老人がいた。
ある日、寅さんは大下集落の親戚の家でご馳走になり、帰る頃には夜になっていた。
寅さんは土産を手に家路を急いだが、その日はずいぶんと酒を飲んでいたので、歩く程に酔いが回ってきた。
やがて風ヶ鼻峠まで戻った時、峠の上に小さな灯りがボーと浮かんでいるのが見えた。
一旦目を離した後、再び峠を見ると灯りは消えていたが、しばらく歩くと、またボーと灯りが見え隠れする。
そこで寅さんは帰り際、親戚に「狐にご馳走を狙われるかもしれないから気をつけろ」と言われたことを思い出し、見え隠れする灯りに注意を払いながら峠を越えた。
やがて墓地の入口まで来ると、そこに何匹もの狐が並んでいた。
寅さんは「お前ら、わしのご馳走を取ろうと思っても、そうはいかんぞ」と言って一番前の狐を抱え、田圃に放り投げた。
そして居並ぶ狐たちを次々に放り投げると、急いで家に帰り、家人に「ご馳走を取ろうとした狐たちを田圃に放り投げてやった」と自慢した。
翌朝、家人が確認に行くと、寅さんがもらったご馳走は道端に散らかり、墓地の入口にある六地蔵が全て田圃に放り投げられていた。
寅さんが放り投げたのは、狐ではなく地蔵だったという。
『大山区史』「狐に化された話」より
伝承地:京丹後市丹後町大山

