丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2025年04月

板仏

板仏 (いたぼとけ)


小野原の公民館に“板仏”という、厚さ一寸(約3cm)程の地蔵に似た板状の石仏が祀られている。
旱魃の時にこの板仏を川に投げ込むと、すぐに雨が降ると伝えられている。
大人が無礼に扱うと祟りがあるが、子供ならば踏もうが蹴ろうが、どんな風に扱っても決して祟られないという。

『多紀郷土史考 下巻』「今田村」より


川に沈められても自力で元の場所に戻る地蔵。


伝承地:丹波篠山市今田町下小野原(板仏は現存していない?)


大きな赤い玉

大きな赤い玉 (おおきなあかいたま)


昔、印内山から時々火の玉が出ると言われていた。
寺山翠という人が子供の頃(昭和初期?)、数人で福知山市街へ芝居を見に行った帰り道の話である。
夜道を歩いて帰り、土村と前田村の境辺りまで来た時、北にある印内山から大きな赤い玉がパッと現れ、東の山の方へ飛んで消えた。
すると、今度はその東の山から赤い玉が出て、元の印内山へ隠れるように消えた。
これは、山に六部(雲水)が埋めてあるからだと言われていた。
また、土村では毎年秋祭の日に村芝居が行われたが、祭が終わって夜になると、狐が芝居の真似をして山が騒がしかったという。

『語りつぐ 福知山老人の知恵』「お仙さん」より


埋められた六部の魂的なものが火の玉となって山から山へ飛び回っていたんでしょうか。


伝承地:福知山市印内


きゅうきゅう場

きゅうきゅう場 (きゅうきゅうば)


宝永年間(1704~1711)の話である。
間人の百姓の娘・おさくは廻船問屋の息子・久左衛門に恋をし、結婚を夢見て暮らしていた。
ところが、家柄の違いから結婚を強く反対され、悲観したおさくは浜で三日三晩泣き続けた末、海に身を投げた。
それ以来、久左衛門を想うおさくの心に同情した浜の砂が「きゅうきゅう」と泣くようになった。
いつしかその浜は“きゅうきゅう場”と呼ばれるようになり、今も人が歩くと泣き続けている。

『外海のまち 丹後町』「悲恋の浜 -きゅうきゅう場のいわれ-」より


京丹後市網野町の琴引浜と、同市丹後町の砂方の浜は鳴き砂の浜として有名です。
その名の通り、歩くと砂が鳴くような「きゅうきゅう」という感じの音が聞こえます。
おさくが投身した浜の名前は明記されていませんが、参考資料は丹後町の話題を扱ったものなので砂方の浜のことだと思います。
ちなみに、年間通して砂が鳴くのは琴弾浜だけだそうです。(砂方の浜は時期や条件によっては鳴らないこともあるらしい)



伝承地:京丹後市丹後町間人


西瓜の蛇

西瓜の蛇 (すいかのへび)


昔、白道路(はそうじ)村にお品という老婆がいた。
ある日の早朝、お品は綾部に行くために尻坂峠を歩いていた。
その途中、不意に尿意を催したので、しゃがんで用を足し、再び立ち上がろうとしたところ、急に体が動かなくなった。
力を振り絞って立ち上がろうとするが、まるで金縛りにあったように、少しも体を動かすことが出来なかった。
そこへ偶然、武士が通りかかり、青い顔でうずくまるお品を見て、背後の草むらを刀で薙ぎ払った。
すると何かが両断されたような音が聞こえると同時に、お品は再び動けるようになった。
背後の草むらを見ると、長さ五尺(約150cm)程の縞蛇が胴体を二つに斬られて死んでいた。

その年の夏、お品の家の畑に、いつの間にか直径二尺(約60cm)もの西瓜が成っていた。
そこでお品は武士の家を訪ね、以前助けてもらったお礼にと、その西瓜を差し出した。
武士はしばらく小首を傾げて西瓜を見つめていたが、やがて部屋の奥へ入って行った。
そして手に刀を携え、後鉢巻に玉襷、袴の裾をたくし上げた姿で戻って来た。
驚くお品に、武士は「今から西瓜の料理を見物させてやる。心を落ち着けてよく見ておけ」と言って、西瓜を刀で真っ二つに斬った。
すると西瓜は三尺(約90cm)余りも高く飛び上がった。
真っ二つになった西瓜の中には、一尺(約30cm)足らずの縞蛇が三匹がいて、いずれも胴体を二つに斬られて死んでいたという。

『何鹿の傳承』「蛇の執念」より


斬り捨てられた縞蛇の怨念が西瓜の中に宿り、武士に復讐する機会を狙っていたのでしょうか。
ということは、縞蛇はお品が畑に成った西瓜を武士にプレゼントすると予見していた……?
すごい先読み力だ。

ちなみに『古今著聞集』には「御堂関白(藤原道長)の物忌中に瓜が献上された。安倍晴明が占ったところ、瓜に毒気があるとわかった。そこで観修僧正が祈祷を行うと瓜が蠢いたので、医師の丹波忠明が瓜に二本の針を突き立て、源義家が刀で真っ二つに斬った。すると瓜の中には針で両目を貫かれ、頸を斬られた小蛇がいた」という話があります。
また、岡本綺堂『異妖の怪談集』には「贈答用の西瓜が女の生首に変わったので割ってみると、中から足に髪の毛が絡みついた青蛙が出て来た。その西瓜が採れた畑では以前にも西瓜の中から小蛇が出て来たことがあった」という話があります。


伝承地:綾部市白道路町


わにわ口の大蛇

わにわ口の大蛇 (わにわぐちのだいじゃ)


昔、三津の村人が徳良山(徳楽山)へ薪拾いに行った。
すると「シューッ」という音が聞こえ、大蛇が村人の方へ近づいてきた。
驚いた村人は死に物狂いで山を下り、人々に大蛇のことを知らせたが、「大蛇なんているわけがない」と言って誰も信じなかった。
その翌日、別の村人が徳良山へ行くと、登山口にある一石一字塔が倒され、横の笹藪が薙ぎ倒されていた。
不思議に思い、笹藪を辿って行くと、辺りを見渡せる広い場所に出た。
するとそこから「わにわ口」という川で水を飲む大蛇の姿が見えたので、村人は急いで村に戻り、大蛇のことを知らせた。
人々は「これで二回目だ。大蛇がいるというのは本当かもしれない」と言って、力自慢の男五人を大蛇退治に向かわせた。
そして男たちはわにわ口へ行き、大蛇に木や石を投げつけて攻撃したが、全く効果がなく、一人を残して全員呑み込まれてしまった。
一人生き残った男は命からがら村へ戻り、鬼を退治したことがある六右エ門という男に大蛇退治を頼んだ。
六右エ門は承諾し、刀を携えて山を登って行った。
そしてわにわ口で大蛇を見つけ、渾身の力で首元を斬りつけたが、全く効かず、跳ね飛ばされてしまった。
そこで六右エ門は近くの大木を切り倒し、それに火を点けて大蛇に投げつけた。
すると大蛇の体はみるみる炎に包まれ、わにわ口に落ち、海まで流されて沈んだ。
それ以来、わにわ口で泳ぐと大蛇が出ると言われ、子供たちはそこで泳がなくなったという。

『三津むかしばなし』より


暇潰しに大蛇に化けて女を脅かす山の権現様。


伝承地:京丹後市網野町三津(丹後町間人)・徳良山

柏原の天狗

柏原の天狗 (かいばらのてんぐ)


今回は丹波市柏原町に伝わる天狗の話を五つ紹介します。

挙田の崖の上に、天狗松という大きな松があった。
この松を切ると祟りがあると言われ、誰も手をつけなかった。
昔、この松に天狗が棲み、梢から由良の愛宕山(氷上町)目がけて飛んで行ったという。

北中の長助という猟師が山へ猪狩りに行った。
山中で猪を待ち構えていると、そばにあった六本の樅の木が大きな音を立てて揺れ出し、大蛇が現れた。
長助は驚き、大蛇目がけて鉄砲を撃ったところ、鼻の高さが30cmもある真っ赤な大きい顔の天狗が現れ、「こら長助、これ以上撃つならお前の命をもらうぞ。命が欲しけりゃとっとと消え失せろ」と怒鳴った。
長助は肝を潰し、転ぶようにして山を駆け下りたという。

沖田の杢助という男が山へ猟に行き、大きな鳥に鉄砲を向けて撃とうとした。
すると「こら待て」という怒鳴り声と共に天狗が現れ、杢助の鉄砲を掴み、見る間にへし曲げてしまった。
杢助はあまりの恐ろしさに飛んで帰った。
数日後、再びその山へ行ってみると、へし曲がった杢助の鉄砲が捨ててあったという。

三人の百姓が権現山の中腹に小屋を建て、泊まり込みで炭焼きをしていた。
ある日の夜、三人が小屋で夕食を食べていると、突然、獣の遠吠えのような唸り声が聞こえて来た。
一人で外に出るのは怖いと、三人は連れ立って小便をしに小屋を出ようとしたが、いきなり天狗が飛び込んで来て睨みつけた。
肝を潰し、腰を抜かして震える三人をよそに、天狗は小屋の真ん中に座り込み、睨みつけながら酒や握り飯を平らげた。
そして天狗は赤い顔を更に赤くして、三人を睨みつけたまま、ずっしずっしと小屋から出て行ったという。

江戸時代、柏原藩の家臣に、星合と滝という武術に優れた侍がいた。
だが禄高は滝の方が上だったので、星合は悔しがり、権現山に「力をお与え下さい」と願をかけ、毎晩山に登って槍の修行に励んだ。
そして二十一日目の満願の夜、星合が山頂で一心に祈っていると、大地が裂けるような轟音が響き、背の高い天狗がにょっきと現れた。
星合が槍を突きつけると、天狗はその穂先を掴んでげらげらと笑い「お前はなかなか勇気がある奴じゃ。日頃の熱心な修行に免じ、天狗の力を授けよう」と破れ鐘のような声で言い、空高く舞い上がって姿を消した。
星合は不思議に思いながら家に帰り、風呂に入って汗を流し、手拭いを絞った。
すると、手拭いはばりばりと音を立ててねじ切れてしまった。
仕方なく別の手拭いを出して同じように絞ったが、またもやねじ切れてしまったので、星合は「これは天狗が授けてくれた力に違いない」と言って喜んだ。
それから間もなく、星合と滝は藩の殿様の御前で試合をすることになった。
試合が始まり、互いに槍を交わした瞬間、星合は滝の槍を跳ね上げた。
すると、それ程強い力で跳ねたわけでもないのに、滝の槍は軽々と空に舞い上がった。
こうして星合は試合に勝ち、その後、滝を凌ぐ禄高を得たという。

『柏原の民話とうた』「天狗五話」より


荒っぽい天狗が多い。


伝承地:丹波市柏原町挙田、北中など


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