丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

2025年12月

スーヲ

スーヲ


丹波国何鹿郡の御千嶽(弥仙山)の頂上に“スーヲ”という名の大木があった。
ところが、この木の影が丹後の海に映って漁の邪魔になるため、漁師たちは困っていた。
そこで漁師たちはスーヲを切り倒そうと思い、道具を持って山に登ったが、木はどこにも見当たらなかった。
不思議に思いながら下山すると、いつものようにスーヲの木の影が海に映っていたという。
御千嶽の神は向かいの松尾山より自分の山が低いことを気にしており、スーヲがあることで両山は同じくらいの高さに見えていた。
だがスーヲがなくなれば御千嶽がみすぼらしくなるため、神が木を惜しがって隠したのだという。

『日本伝説集』「箒木」より


天を衝く巨樹の伝説は各地にあり、『日本書紀』には筑紫後国三毛(福岡県大牟田市三池)に九百七十丈(約2.9km)の椚の倒木があり、人々はその木を橋にして往来したと記されています。
この椚が立っていた時は、樹影が朝には杵島山(佐賀県)を、夕方には阿蘇山(熊本県)を隠してしまうくらいの大きさだったんだとか。
また京丹後市には「神代杉」という空高くまで伸びた六本の大杉があり、この杉の先端が擦れ合って火が上がっているところを通りすがりの八百比丘尼が目撃したという変わった伝説があります。
ちなみに山田野理夫の『おばけ文庫 6 たんたんころりん』にも本文と同じ話がありますが、何故か大木の名前は「スー」ではなく「スー」となっています。「ヲ」を「ラ」と読み間違えた?


伝承地:綾部市於与岐町・弥山山


相撲人と大蛇

相撲人と大蛇 (すまいびととだいじゃ)


昔、丹後国に海恒世(あまのつねよ)という右近衛府の相撲人がいた。
ある夏、恒世はお供の童子と散歩をしている内、家の近くを流れる古い川の淵まで来た。
すると対岸の辺りから水が膨れ上がり、恒世の方へ向かって来たかと思うと、大蛇が水中から首を突き出した。
大蛇はしばらく恒世を見つめていたが、やがて水中に頭を入れると、再び恒世の方へ近づいてきた。
そして水中から伸ばした尾を恒世の足に巻きつけ、物凄い力で川に引き込もうとした。
思わず引き倒されそうになったので、力を込めて強く踏ん張ると、硬い土の中に五、六寸程足がめり込んだ。
するとその途端、大蛇の尾がぷつりと切れ、水中に血が浮かんだ。
恒世の足には引きちぎられた大蛇の尾が巻きついており、解いて水で洗ってもその跡は消えなかった。
やがて従者たちが駆けつけて来て、その内の一人が「酒で跡を洗うといい」と言うので、酒を取りに行かせて足を洗った。
そして大蛇の尾を引き上げさせたところ、切り口の太さは一尺程もあるように見えた。
対岸には大木の株があり、大蛇はそこに頭を巻きつけ、尾を水中から恒世の方に渡し、足を引っ張っていたのであった。
ところが大蛇の力は恒世より劣っていたので、真ん中から切れてしまったのだという。
その後、「あの大蛇の力は何人力だったのか試してみよう」と言って、大きな縄を恒世の足に巻きつけて十人程で引いてみた。
だが恒世は「あの蛇程の力ではない」と言うので徐々に人数を増やしていったが、「まだ足りない」と言い、遂に六十人がかりで引いた時、ようやく「それくらいの力だった」と納得したという。
このことから、恒世の力は百人力程であったと考えられた。

『今昔物語集』巻第二十三「相撲人海恒世会蛇試力語」より


お相撲さん強い。


伝承地:丹後のどこか(場所は不明)

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