山ひょう (やまひょう / さんひょう?)


与謝野町と京丹後市の境に水戸谷という峠がある。
そこには“山ひょう”というものがいて、足の裏から油を取るという。
山ひょうは峠を歩く旅人の足から油を取っていたという。

『おおみやの民話』「山ひょう」より


人の油を取る妖怪、と言って思い浮かぶのは岩手県の“油取り”(『遠野物語』)や、島根県の“子取りぞ”(『総合日本民俗語彙』)などでしょうか。
ただこれらの妖怪たちは「夕方に現れ、人(女子供)をさらって油を搾り取る」という、隠し神的な要素がありますが(取られた者は多分死ぬ)、山ひょうにはそういう要素はなさそうです。
とにかく極端に情報が少なく(参考文献の本文もたった二行という省エネっぷり)、姿形はおろか、油の奪取量や目的すら謎の妖怪なのです。
推測ですが、油を取ると言っても致死量を奪うわけではなく、ダニやヒルのように通行人の足にこっそりと張りついて、気づかれない内に微量の油を吸い取るだけの妖怪なのではないでしょうか。


8.18
現在の水戸谷峠は与謝野町と京丹後市を結ぶ国道になっていて、日中は割と多くの車が行き交っています。
以前、試しに与謝野町側から京丹後市側まで峠を歩いてみましたが、残念ながら油は取られませんでした。
通るのは車ばかりなので、山ひょうも油を取れずに苦労しているのかもしれませんね。


伝承地:与謝野町上山田、京丹後市大宮町三重