大腕 (おおうで)
昔、旅の武士が上粟野から仏主に向かって歩いていると、突然山の方から「出すぞ」と大きな声がした。
武士が「出してみよ」と答えると、山の方から大きな腕がニュッと突き出された。
武士は驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻し、腰の刀でその大腕を斬り落とした。
だが斬ったことを恐れ、落ちた大腕をこの地に葬り、お堂を建てて地蔵尊を祀ったのだという。
武士によって祀られた地蔵は「肱折地蔵」と呼ばれ、肘が痛む時はこの地蔵に願掛けをすればすぐに治ると言われている。
治ったお礼に腕の形に切り揃えた板をお堂に供えるのだという。
『和知町 石の声風の音』「肱折地蔵」より
京丹波町仏主にある肘折地蔵
わざわざ出現を事前に教えてくれる律儀?な大腕の妖怪です。斬られますけど。
もしも武士が斬らずにいたらどういう結末になっていたのでしょう。
山へ引きずりこまれて美味しくいただかれていたかもしれませんね。
完全な余談ですが、現地を訪れたところ、お堂の傍にある経塚の表面には「発起者 上野国房之助」と彫られていました。
このことから、大腕を斬り落としたという武士は上野国(現・群馬県甘楽郡)の人物だったのではないかと思います。
当時この辺りは園部藩の統治地域で、藩主小出家は上野国にも二千石の知行を持っていました。
この武士は何らかの用事で上野国からこの地に訪れた藩の関係者だったのではないでしょうか。


