筵の手 (むしろのて)*
大正末期から昭和初期の頃の話である。
ある炭焼き職人が、山中の炭窯に泊まり込んで作業をしていた。
彼が寝泊まりする小屋は畳一枚分の床に、外気除けの筵が吊ってあるだけの簡易なものだった。
職人は小屋で眠りについたが、その夜は生温い風が吹いてやけに寝苦しかった。
妙な気配を感じて目を覚ますと、小屋の周りに吊ってある筵の隙間から、人の手がヌーッと出ていることに気づいた。
それを見た瞬間、職人は金縛りに遭い身動きが取れず、体が震えたという。
『近畿民俗』通巻136,137号「丹波美山の言葉と民俗」より