赤池の鯉右衛門 (あかいけのこいえもん)
海士から油池へ行く途中に慈観橋という橋がある。
この橋から南西へ50m程進んだ所に「赤池」という濁った池があり、そこに「鯉右衛門」という、大人の体よりも大きい鯉が棲んでいた。
鯉右衛門は百年以上生きている鯉で、赤池の主と言われていた。
ある時、海士の若者たちが池の水をかき出して鯉右衛門を捕まえようとした。
ところが作業の途中で、若者たちの家の方から火事の煙が上がった。
若者たちは慌てて村へ戻ったが、どこも燃えている様子はなく、「騙された」と言いながら赤池へ引き返し、また水を掻き出す作業を始めた。
しばらくすると、再び家の方から煙が上がったが、若者たちは狐狸に騙されているのだろうと思い、気にせず作業を続けた。
そして池の水が減った頃、村人が若者たちの家が燃えていることを伝えに来た。
今度は本当に火事が起こっており、若者たちの家はことごとく焼け落ちていた。
村人たちは「これは鯉右衛門の祟りだ」と噂し、それ以来、赤池の主を捕まえようとする者はいなかったという。
『熊野郡伝説史』「赤池の主鯉右衛門(海部村)」
『丹後の伝説 ふるさとのはなし』「赤池の鯉右衛門」より
一度目の火事は鯉右衛門からの警告だったのでしょうか。
それにしても主を捕まえるためとはいえ、「池の水ぜんぶ抜く」を人力でやろうとした若者たちのバイタリティは計り知れませんね。
ちなみに兵庫県豊岡市と美方郡にも、これとよく似た話が伝えられています。
豊岡市の方は、入り江の水を掻き出す→途中で「村が火事」と聞いて帰るが何事もない→入り江に戻ると掻いたはずの水が元通りになっている→これが何度も繰り返されるので「入り江の主」の祟りだと考え水掻きを止める。
美方郡の方は、地中に埋まっているという噂の鐘を掘り出そうとする→途中で「村が火事」と聞いて帰るが何事もない→鐘の祟りだと恐れて掘るのを止める……という話です。(『郷土の民話(但馬編)』)
伝承地:京丹後市久美浜町油池(赤池は現存していない)
伝承地:京丹後市久美浜町油池(赤池は現存していない)