盗人口の怪異 (ぬすとぐちのかいい)
下天津の宮津街道(国道176号線)に「盗人口」と呼ばれる所がある。
夜にここを通ると、様々な怪異に遭遇するという。
① 小豆洗い
夜更けに崖下の川(由良川)で何かが「フウフウ、ブツブツ」と言いながらザルで小豆を洗っている音が聞こえてくる。
その音は人の歩みに合わせ、崖下をついて来るという。
② 砂まき小僧
崖の上でガサガサと音がしたかと思うと、小石や砂が通行人目がけて撒かれる。
これも人の歩みに合わせ、ガサゴソと音を立てながら小石や砂をぶつけてくるという。
③ 灯り盗み*
提灯を持って歩いていると、急に蝋燭の火が消えることがある。
中を覗くと蝋燭がなくなっていたり、時には提灯を持つ手が何か柔らかいものに触れられたと思った途端、提灯ごと何者かに奪われるということもあった。
④ 火の玉
雨降りや霧の深い夜は幾つもの火の玉が飛ぶので、村人はこの時は通らなかったという。
⑤ 一つ目小僧
大きな荷物を持って通ると、背丈が一丈(3m)以上ある一つ目の大男が、両手を広げて立ちはだかる。
通行人は恐怖で腰を抜かし、気がつけば荷物をなくしているという。
村人はこの妖怪を“一つ目小僧”と呼び、最も恐れた。
⑥ 髪を梳く娘*
川岸に松が数本あり、その中に枝が横に長く伸びた雄松があった。
晴天の月夜にここを通ると、美しい少女が松の枝に白い両脚を前に垂らして座り、長い黒髪を櫛で丁寧に梳いていることがある。
少女に見とれている内に、持っていた荷物がなくなっているという。
このように様々な怪異が起こるため、土地の人々はいつしか怖い目に遭う、盗人に遭うということから「盗人口」と呼ぶようになり、夜間の通行を控えたという。
『語りつぐ 福知山老人の知恵』「下天津盗人口」より
豪華六本立て。まさに怪異妖怪のオンパレード。
ちなみにこの話には余談があり、「自分も幽霊になれば妖怪に遭遇しないのでは?」と考えた人が、櫛を口に咥え、ざんばら髪に白装束の幽霊のコスプレをして盗人口を通ってみた、ということがあったそうです。
この村人が無事怪異を避けられたかどうかは不明です。
現在の宮津街道は車の往来が激しく、妖怪が出そうな雰囲気はありません。
夜に通っても出遭うのは鹿ばかりです。
伝承地:福知山市下天津