八切山の官女 (やぎりやまのかんじょ)*
ある夏の夕暮れ、祖母と少女が三俣の名国橋の近くを歩いていた。
ふと右手に聳える八切山を眺めると、三宝(神前に物を供える時に使う台)を恭しく掲げた官女風の女性が、山道を下りて来るのが見えた。
白衣に緋袴を履き、黒髪を腰まで長く垂らした妖艶な姿だったという。
三宝には鯛が載せられており、その目玉が異様に輝き、少女を見つめていたという。
だが、橋から山までは150m程離れていて、三宝に載せられた鯛が見える距離ではない。
恐ろしくなった少女は、悲鳴を上げてその場から逃げ出した。
悲鳴を聞いた神社の宮司が飛んで来たが、その頃には官女の姿は消え失せていたという。
『語りつぐ 福知山老人の知恵』「八切山の亡霊」
『三俣のあゆみ』「矢切山の亡霊」より
高知県には“アスカイ様”という、これによく似た妖怪が伝えられています。
アスカイ様…春や秋の夕方、50~100mほど離れた山縁などに稀に現れる官女姿の妖怪で、その姿を近くで見た者はいないという。(『近世土佐妖怪資料』)
「夕暮れ時」「官女風の姿」「離れた場所に現れたのを遠くから見る」などなど、“八切山の官女”と重なる特徴が幾つもあるのは興味深いですね。
名国橋付近から見た八切山。結構遠い。
