件 (くだん)


天保七年(1836)に発行された瓦版によると、宮津市の倉梯山に“件”という妖怪が現れたという。

天保七年十二月、丹後国の倉橋(倉梯)山の山中に、体は牛、顔は人に似た“件”という獣が現れた。
この獣は宝永二年(1705)十二月にも現れ、翌年から豊作が続いたという。
件を描いた絵図を貼っておけば家内繁昌、無病息災、一切の災いを免れて大豊作となる。
非常にめでたい獣であるという。

また、福知山市三和町には“件”という、体は牛で顔は人間という化物がいて、「件が今年はどう言うた」などと言ったとされる。

『かわら版物語』「件という怪獣」
『学校の怪談 口承文芸の研究Ⅰ』「人面犬と件の予言」
『昭和五十年度 民俗採訪』「俗信」より


“件”は社会情勢が不安定な時に現れるとされる妖怪で、豊作・飢饉・疫病・災害などを予言したと言われています。
江戸時代から近現代にかけて、西日本を中心に目撃例があったとのこと。
丹波・丹後地域では福知山と宮津に現れたらしく、福知山の件は「件が今年どう言うた」と、何らかの予言をしていたことを仄めかす一文が載せられています。
「件が今年は○○と言った」と解釈するなら、福知山の件は毎年、あるいは何年かに一度のペースで現れて、その度に何かしらの予言をしていたのかもしれませんね。

件の図
件の瓦版(『かわら版物語』より)
件の絵を描いた紙を屋内に貼っておくと、災禍を免れられるお守りになるんだとか。試される絵心。

倉梯山
件が現れた宮津市の倉梯山。(写真中央の山。標高93m。低い