沼ヶ成の魔物 (ぬまがなるのまもの)


滝ヶ宇呂から宮津へ向かう山の中腹に、沼ヶ成という窪地がある。
遙か昔、ここがまだ池だった頃の話である。由造という猟師がこの池で鴨の一群を見つけた。
由造は狙いを定めて鉄砲を放ったが、不思議なことに鴨は一羽残らず姿を消していた。
やがて、どこからともなく棺桶が彼の方へ近づいてきた。由造は寒気を覚え、その場から一目散に逃げ出した。
棺桶の中から「由やん喃(のう)」と自分を呼ぶ声がこだましたが、由造は脇目もふらずに村へ逃げ戻った。
由造から話を聞いた村の名主は、これは池に棲む主の仕業に違いないと考えた。
池の主は不浄を忌むという。早速名主は池へ向かい、「牛の不浄物」を水中へ投げ込んだ。

その日の夕方、生暖かい風と共に激しい雷雨が起こった。天変地異のような雷雨は一晩中治まらず、人々を不安におののかせた。
夜が明け、雷雨が去った後に村人たちが外へ出ると、名主の田圃が一夜にして河原と化していた。
それ以来、件の池は水を湛えることはなくなり、「沼ヶ成」という地名を残すだけとなった。

『郷土史岡田上』「沼ケ成の魔物」より


池に不浄物を投げ込まれたことにブチ切れて天変地異(嵐)を起こしたんでしょうか。
それにしても「由やん」って、めっちゃフレンドリーな呼び方をする主ですね。