作業所の怪音 (さぎょうじょのかいおん)


昔、美山の芦生演習林内の七瀬谷には作業所があった。
大正の頃、作業者たちはここに寝泊まりして山仕事をしていたという。
そして、この作業所に泊まると不思議なことがよく起こったと言われている。

深夜になると、山奥からゴシゴシとノコギリで大木を伐る音が聞こえ始め、しばらくするとドドーッと木が倒れる音が響いていくる。
こんな深夜の山中に人がいるはずもなく、暗闇の中で木が伐れるはずもない。
朝を待って音のした辺りを探してみるが、何も変わった様子はなく、倒れたはずの木もどこにもないのだという。
また、時々作業所の屋根にパラパラと小石や砂が投げつけられる。
驚いて外に出ても、辺りは一面の暗闇が広がるばかりで誰もいないのだという。
木を伐り倒す音をさせるのは狸、石を投げる音は猿の仕業ではないかと言われているが、定かではない。

この作業所はもう残されていないが、今でも七瀬谷の奥へ行くと、日中でも不思議な音が聞こえてくると言われている。

『京都の秘境・芦生』「山の不思議と謎の動物」
『山の怪奇 百物語』「京都北山怪奇噺」より