又ェ門ガシガシ (またえもんがしがし)*
ある夏の日、又ェ門という男が野良仕事をしていた。
昼になり休憩していると、少し離れた所で戯れている三匹の子狐を見つけた。
ふと悪戯心が芽生え、又ェ門は子狐たちに近づいた。三匹は慌てて近くの穴に逃げ込んだ。
又ェ門は杉の葉を集め、穴の入り口に詰めて火を点けると、笠で扇いで煙を奥へと送り込んだ。
外に出れば捕まると思ったのか、子狐たちは煙の充満した穴の中で苦しみ続けていた。
その夜、又ェ門が自宅で眠っていると、表の木戸をガシガシと引っ掻く音がする。
引っ掻き音と共に、「汝(われ)の子が可愛けりゃ他人(ひと)の子も可愛い、又ェ門」という狐の声が聞こえた。
その声と音は三十分程続いた。
朝になって戸を見てみると、そこには鋭い爪跡が残されていた。
それから毎晩、狐がやって来ては戸をガシガシと掻くようになった。
又ェ門はとうとう耐えられなくなり、四日目の夜、戸を掻きに来た狐に子狐をいじめたことを謝った。
又ェ門の謝罪を受けて溜飲を下げたのか、その日から狐は来なくなったという。
『紫摩城』「大内の民話 二」より
これは又ェ門が悪い。
伝承地:南丹市美山町内久保(大内)