さざえの嫁さん (さざえのよめさん)


昔、ある所に夫婦が住んでいた。
嫁は夫のために毎日米を炊いてくれていたが、それはとても美味しいご飯だった。
どんな方法で米を炊いているのだろう。
気になった夫は仕事へ行くふりをして、たか(一階と天井の間の物置)に隠れて嫁が米を炊く様子を見ることにした。
やがて嫁が米を研ぎ始めた。そして米釜をかまどにかけると、その上にまたがり小便をした。
夫は小便で炊いた米を喰わされていたのかと怒り、嫁と離婚することにした。
離縁を突きつけられた嫁は、泣きながら家を去った。
彼女は浜辺まで行くとさざえの姿になり、コロコロッと海に落ちた。
さざえが人間の女に化けて嫁になり、さざえ汁で米を炊いていたのであった。

『季刊 民話 1975冬 創刊号』「奥丹後物語 草稿」より


これは『日本昔話大成』で言うところの「蛤女房」系の話になります。
他の地域の嫁は蛤、鯛、鮭、鮒、人魚など、バリエーションに富んでいます。
米の炊き方は米釜に小便したり尻を漬けたりと、皆やることはだいたい同じですが。
この系統の話は『古事記』の“オオゲツヒメ”(食物神。鼻、口、尻などから食べ物を出しそれらをスサノオに振る舞うが「汚い」とキレられて殺される可哀想な女神)にどことなく通じるところがあって面白いですね。