動く生首 (うごくなまくび)


昔、上福井の村人が舞鶴座へ芝居を見に行った帰りのことだった。
人気の無い夜道を歩き、やがて下福井の近くまで来た時、黒く太いものが道一杯に落ちていることに気づいた。
提灯の灯りで確かめると、そこには若い女の生首が転がっていた。黒く太いものは女の長い黒髪だった。
だが先へ進むにはこれを跨いで行くしかない。どうしようかと考えていると、生首が二、三間(約3~5m)ほど上福井の方向へ動いた。
しばらくしてまた二、三間、上福井の方へ移動した。村人はその動きに合わせ、生首について歩いて行った。
そのまま坂を登ると数軒の民家が見えたので、村人は助けを求め玄関戸を叩いた。
すると、黒髪の生首はスーッと消えてしまったという。

『舞鶴の民話 第二集』「年老いたタヌキ(下福井)」より