風鼬 (かぜいたち)


宇治郡山科御陵村(現・京都市山科区御陵)の吉田庄吉という男が、同村の北詰端という所で畑仕事をし、午後四時過ぎに帰宅しようとした。
すると一陣の旋風が吹き、それと同時に庄吉は地面に倒れた。
一緒にいた男が駆け寄ると、庄吉は全身が真っ黒に焦げ、数ヶ所に傷を負った状態で死んでいた。
男は驚いて警察署に駆け込み事情を訴えた。巡査医員が庄吉の死体を検視すると、その傷は獣の鋭い爪に引っかかれたような痕だったという。
付近の者はこれを「“風鼬”のせいだ」と言っていたという。風鼬とは、他の所でいう“鎌鼬”の類いだろうか。


『明治期怪異妖怪記事資料集成』朝野新聞 明治十六年七月三日「鎌鼬」より


引っ掻き+丸焼きの合わせ技で命を奪っていく恐ろしい妖怪です。しかも無差別っぽい。
鎌鼬は日本各地に伝承されている有名な妖怪ですが、この風鼬のように「対象を丸焦げにして殺害する鎌鼬」という話は聞いたことがありませんね。
そういう意味ではかなり珍しいタイプの鎌鼬なのでは。
そもそも全く別種の妖怪という可能性も……。