うてびの尻ひきまんと (うてびのしりひきまんと)
昔、旅人が京へ向かう途中、倉本池(五坊谷池)の近くにさしかかった。
夕闇に辻地蔵の姿が浮かび、その先にはうてび(池の水が落ちて出来た滝壺)が見えた。
すると不意に辻地蔵の姿がかき消え、朱い狐火が灯った。
その火に照らされ、雲を突くようなのっぺらぼうの大入道が旅人の前に立ち塞がった。
「この先に行きたければ、わしの股の下をくぐれ」
断ることも出来ず、旅人は大入道の両脚の間をくぐり抜けると、そこはうてびの畔だった。
急いで道に戻ろうとすると、うてびの真ん中から痩せさらばえた黒い影が手招きをした。
そして旅人は見えない力に引っ張られ、いつの間にか水際まで連れて来られた。
その時、水中から蛙の水かきのような細い手が二本伸び、旅人の両足首を掴むと、そのままうてびの中へ引きずり込んだ。
やがて旅人の姿は水中に消えてしまった。
旅人を水に引き込んだのは、倉本池のうてびに棲む“尻ひきまんと”だと言われている。
『親と子の ふるさと西紀の民話集』「うてびの尻ひきまんと」より
狐火が足を止め、大入道がうてびに誘導し、尻ひきまんと(たぶん河童)が捕まえる。
流れるような連携プレーですね。
現在の倉本池(五坊谷池)。
