お梅の亡霊 (おうめのぼうれい)*
元禄末の頃、丹波国山家藩領の代官役、楠数右衛門にはお梅という妻がいたが、長く患った末に死んでしまった。
お梅は松福寺に葬られたが、彼女の墓穴を掘った時、沢山の蛇が出て来て埋葬を妨げられたため、皆不思議に思った。
その後、数右衛門は福知山から後妻を娶り、友人を招いて披露宴を行った。
すると死んだはずのお梅が現れて挨拶をしたため、友人たちは興醒めして帰って行った。
「私は役儀を務める身なので外へ出ることが多い。その時に留守番がいなくては家が治まらないことはわかるだろう。それなのに亡霊として現れるのは嫉妬の執念か。未練がましい奴め」
そう数右衛門が叱ると、お梅は消え失せた。
だがそれから、後妻が髪を結っていると鏡の中にお梅の影が映るようになった。影は鏡の中だけで、外には何もなかった。
そんなことが続いたため、とうとう後妻を親元へ帰すことになってしまった。
だが、親元まで駕籠に乗って行こうとしたが、そこにお梅も乗り込んで来たため、重くて担ぐことが出来ず、結局家へ引き返した。
真言僧や山伏の祈祷を受けても効果はなかった。
ある時、覚応寺の禅嶺住職が懺法施餓鬼の法事を行うと、その夜、病気で寝込んでいた弟子の僧の元へお梅が現れ「この度御法事に預かったが未だに成仏出来ません。今後は障りをなさないようにします。住職にはお目にかかれないので、こちらにお礼を言いに来ました」と言って消えた。
しかし、その後もお梅の障りは止まず、遂に数右衛門は自殺してしまった。
次いで彼の弟も自殺し、やがて一族は皆死に絶えたという。
『拾椎雑話 巻二十七』「他邦」より