神木の祟り (しんぼくのたたり)


昔、丹州のある村の男が、屋敷を建てるため、神社の前にある大木を伐って建材にしようとした。
ところが、神社の管理をしている老婆から「この神木を伐れば祟りが起こるだろう」と止められた。
だが気の強い男は「祟りも人によるものだ」と言い張り、大木を伐り倒してしまった。この木材を使い、屋敷は無事に完成した。
しかし、一、二ヶ月が過ぎた頃から男は患い始め、時々よくわからないことを口走るようになり、遂に死んでしまった。
男の遺体は棺に入れられ僧が番をしていたが、夜になると這い出して来て、付け木に火を灯して辺りを見歩いたり、箒を持って座敷を掃除したりと動き回った。
それが何度も続くので、親族たちは「とにかく早く葬るべきだ」と翌日に葬式を行ったが、遺体を担いで屋敷の門をくぐった瞬間、目も開けられない程の稲光が走り雷鳴が轟いた。
親族たちは急いで男を葬り、帰ってきたという。

『新説百物語』「神木を切りてふしぎの事」より