権助狐 (ごんすけぎつね)
昔、久美浜の三分に歌の上手な伝兵衛という男がおり、毎日サクラオウ峠を越えて浜詰(網野町)へ魚を買いに行っていた。
ある日、浜詰からの帰り道で大雨に降られ、雨宿りをしている内に日が暮れてしまった。
伝兵衛が得意の歌を歌いながら夜道を歩いていると、突然周囲が明るくなり、白の袈裟を着た大坊主が現れた。
峠にはよく人を化かす「権助」という狐が棲んでいるという。
「これは権助狐に違いない。お前なんかに化かされないぞ」
そう言って伝兵衛は大坊主を殴りつけたが手応えがなく、坊主は姿を消してしまった。
そして伝兵衛が峠の頂上まで登って来ると、また周囲が明るくなり、道が三本四本と増えた。
「また権助狐だな。こういう時は落ち着くことが大事だ」
伝兵衛はその場に座ってしばらく休憩していると、その内に何本もあった道は消えていった。
すると今度は後ろから四十歳程の美女が現れた。
伝兵衛は女の美しさに魅了され、彼女の背中に手を回そうとした。
だがそこには大きな狐の尻尾があり、それを掴んだ伝兵衛は女が権助狐であることに気づいた。
伝兵衛は怒り狂い、掴んだ尻尾を振り回して押さえつけると、権助狐は「許して下さい」と哀願した。
伝兵衛は二度と人を化かさないことを条件に、権助狐を逃がしてやった。
それから権助狐は姿を現さなくなり、人々は大変喜んだという。
『くみはまの民話と伝説』「きつねと、伝兵衛」より
網野町には同じ名を冠する“ごんすけ狸”がいますが、何か関係性があったりするんでしょうか。
ごんすけ狸は何度追い出されても悪事を止めない筋金入りのワルでしたが、権助狐は怒られたら割とあっさり改心するタイプのようです。
サクラオウ峠の位置は不明。網野町浜詰-同町俵野-久美浜町三分を繋ぐ新道・フルーツラインの辺りにあった?