もみじの亡霊 (もみじのぼうれい)*
昔、宮津に芝田主馬という侍がいた。
彼には女房と三人の子供がいたが、女房は嫉妬深い性格で、夫がもみじという侍女に目をかけていると疑っていた。
そして女房は夫が出かけた隙を狙い、もみじを井戸へ落とし埋め殺してしまった。
家に戻った主馬は井戸が埋められていること、もみじがいないことを問うが、女房は「井戸は潰れた」「もみじは辞めさせた」と嘘をついてごまかした。
その後、三人の子供が次々と病に倒れ、皆死んでしまった。
この時女房は妊娠しており、やがて無事に子供が産まれると、不幸中の幸いと喜び可愛がった。
だが子供はてんかんを患っており、様々な治療を試みたが効果は薄いままだった。
数年後のある夏の日、主馬の旧知の浪人が腕利きの鍼師と共に、泊まり込みで子供の治療を行うことになった。
その夜、二人は蚊帳を吊り、戸を開け放して世間話をしていた。
ふと下駄の音が聞こえたので路地を見ると、そこには腰から下を血に染め、長い髪を逆立てた青白い顔の女が立っていた。
女は「私は侍女のもみじだ。女房に殺された恨みを晴らすため、三人の子を取り殺してやった。今から残った子供も殺してやる」と言い、消え失せた。
その時、奥の間から夫婦の悲鳴が聞こえた。
二人は慌てて駆けつけたが、子供は既にこと切れていた。
その後、浪人たちからもみじの亡霊の話を聞いた主馬は女房と離婚し、出家したという。
『諸国百物語』「芝田主馬が女ぼう嫉妬の事」より
主馬が不憫。