狼薬 (おおかみぐすり / ろうやく?)


久美浜湾東の神崎集落には、家伝の秘薬を売る大家と呼ばれる家があった。
大家の薬は婦人病に効くということで、遠方から買いに来る者も多かったという。
この薬については、ある言い伝えが残されている。

昔、犬に似た動物が大家の縁の下へ潜ったのを見たという者がいた。
それを皮切りに、何人もの村人が縁の下に潜る動物を見たと言うようになった。
この噂を聞いた家主は物干し竿を縁の下へ入れて探ってみたが、何も出て来なかった。
翌朝、家主の元へ一人の老婆が現れ、
「私は狼だ。私の眷属が長い間縁の下に棲まわせてもらっていたが、人々に知られてしまったからには出て行かなくてはならない。お世話になった礼に薬の製法を教えたい」
そう言って、家主に薬の製法を教えた。
老婆の教え通りに作ってみると、婦人病に効果のある薬が出来た。
狼に教えてもらった薬は評判となり、「狼薬」と呼ばれるようになったという。

『丹後の伝説 ふるさとのはなし』「狼薬」より