がたろ
丹波地方では河童のことを“がたろ”という。
がたろは裸におかっぱ頭という奇妙な格好をした妖怪で、頭に水の入った皿を載せている。
皿の水がある時は非常に強いが、水がなくなった途端に弱くなるという。
がたろは一人で川に来た子供を見つけると、その友達に化け、深みに誘い出して水中へ引き込み、尻から腸を抜いて食べるという。
ある時、川北村の老人が畑仕事をしていると、子供がやってきて彼の尻を触り始めた。
老人は不思議に思い尻に石を挟んでみたが、子供はそれでも触り続けていた。
怒った老人が怒鳴りつけると、子供は驚いてひっくり返った。子供はがたろだった。
がたろは倒れた拍子に頭の皿の水をこぼしてしまい、力を失ってしまった。
老人はがたろを叩き殺そうとしたが、「これからは川北村の人を取ったりしない」と誓ったので見逃がすことにした。
それから、がたろが姿を見せることはなかった。
しばらく経ったある日、同じ老人が牛を連れて川のそばを歩いていると、がたろが現れて牛の足を引っ張った。
だが牛の力は強く、逆にがたろは蹴飛ばされてしまった。
老人は約束を破ったことを怒ったが、がたろは「人はダメでも牛なら良いかと思って引っ張った」と謝った。
それ以来、がたろは虫や魚を食べるようになり、川北村の者を襲うことはなくなったという。
『爺のはなし -前中精逸遺稿集-〈私家版〉』「がたろの話」より
力は強いけど牛には勝てないんですね。