人魚女房 (にんぎょにょうぼう)


ある日、若い漁師の男が海で釣りをしていると、顔は人間、体は魚の“人魚”が釣れた。
男は「他の人に捕まったら見世物にされてしまうから、もうここには来ないようにしろ」と言って人魚を海へ逃がした。
その夜、男の家に若い女が宿を求めてやって来た。二人は一緒に生活を始め、やがて夫婦となった。
ある日、女が「塩水の風呂を沸かしてほしい」と頼んできたので、男は海水で塩水の風呂を沸かすようになった。
女は「私が風呂に入っている間は見ないでほしい」と頼んだが、気になった男は入浴中の風呂場を覗いた。
すると、人魚の姿になった女が塩水の風呂の中で泳いでいた。女は昔助けた人魚だった。
その後、正体を見られたことに気づいた女は別れを告げ、男の元を去ったという。

『山ことばと炉端話』「丹波美山の昔話」
『伝承文芸 第十号 -丹波地方昔話集-』「人魚女房(魚女房)」より


「動物が人間と結婚した後、正体がバレて離縁する」という異類女房系の婚姻譚の一つですが、嫁が人魚というのは珍しいですね。
美山は山に囲まれた場所なのに海関係の話があるのも面白い。
昔、福井県の若狭から京都へ物資を輸送するルート(いわゆる鯖街道)の中に美山経由の道があったので、そこを往来する商人から聞いた話が伝られたんでしょうか(福井県には人魚の伝承がありますし)。
ちなみにこの話は『日本昔話大成 2』に「魚女房」の類話として採録されています。

伝承地:南丹市美山町