奥野部の氏神 (おくのべのうじがみ)
昔、奥野部に変わった男が住んでいた。
男は秋から春にかけて町の米屋へ働きに出ていたが、毎朝神社に立ち寄っては氏神のご神体を手拭いに包んで出かけていた。
勤め先ではご神体を米俵の上に置いておき、仕事が終わると再び手拭いに包んで帰路に着いたという。
途中、岩井橋まで来ると「お宮様のそばまで帰りなよ」と言って、ご神体を川に投げ入れていた。
するとご神体はスイスイと川上へ泳いでいき、神社の前まで遡って来たという。
男はそれを引き上げ、手拭いで拭いてから神殿に戻して帰宅していた。
また、この男は夏になるとご神体を持って川に行き「涼みなされ」と言って水中へ投げ込んでいた。
ご神体が堰に引っかかって止まった時も、男が「早く来ないと放っておきますよ」と呼ぶと、スイスイと泳いで川下まで来たという。
奥野部の氏神は村人の楽しみを自身の楽しみとしていたため、こうした扱いを受けても罰を当てることなく、温かく見守っていたという。
『語りつぐ 福知山老人の知恵』「奥野部の氏神さま」より
泳ぎも出来る心優しい氏神様です。
伝承地:福知山市奥野部(御土路神社?)