赤子の泣き声 (あかごのなきごえ)*
昔、海向かいの村から和田へ嫁いできた女がいたが、彼女は常々実家に帰りたいと願っていた。
ある冬の朝、大雪が降って海に氷が張りつめたことで、浜の間を歩いて渡れるようになった。
喜んだ女は氷上を渡って対岸の実家へ帰ったが、両親は彼女を不心得者だと諭し追い返してしまった。
女は泣く泣く氷上を引き返したが、行きに小便をしたところが溶けて穴になっており、そこに落ちて死んでしまった。
残された赤子は、母に先立たれた悲しみから毎日泣き明かし、やがて死んでしまった。
その後、夜更けになると、村外れの海辺から赤子の泣き声が聞こえるようになった。
以来、和田の人々は海向かいの村から嫁を貰わなくなったという。
『郷土研究』第七巻二号「丹後舞鶴できいた昔話」より
死の遠因は小便……。
ちなみに『京都 丹波・丹後の伝説』にも同じ話が載っていますが、こちらでは赤子の泣き声が聞こえるのは「夜更け」ではなく「雨のそぼ降る夕暮れや、アラレの降る日」とされています。
伝承地:舞鶴市和田