火事を防いだ稲荷 (かじをふせいだいなり)


大正三年(1914)の大晦日の夜、新井の玉林寺が火事になり、近くの家々まで延焼した。
玉林寺から十間(約18m)離れた所に大きな家があったが、火はその家まで迫っていた。
いよいよ火が近づいた時、その家の垂木の端辺りに正一位ののぼり旗が立った。
そして「ワーッ」という鬨の声が上がり、迫り来る火を防いだという。
誰もがその旗と声を聞いており、これはその家で信仰しているお稲荷様が助けてくれたのだと言われている。

『語りによる日本の民話 10 丹後 伊根の民話』「稲荷が火事を防ぐ」より


稲荷や狛犬などの神の眷属が火事を防いでくれるという伝承は伊根町の他、舞鶴市や丹波篠山市にも伝えられています。

完全なる余談ですが『伊根町誌 下巻』によると、玉林寺は安永七年(1777)五月・大正元年(1912)十二月と、二度も火災に遭っています。
しかも安永の時は民家からの類焼……災難ですね。
本文では火事は大正三年となっていますが、実際はその二年前の大正元年に発生したようです。


玉林寺
お稲荷様の伝承とはあまり関係ありませんが、伊根町新井・玉林寺。
現在は無住となっていて振宗寺(伊根町井室)の住職さんが兼務しているとのこと。


伝承地:伊根町新井・玉林寺付近