竜女 (りゅうじょ / りゅうにょ?)
倶利伽羅峠には大きな滝があり、滝の宮という古社と不動明王が祀られていた。
そして、この峠には夜になると化け物が出ると言われていた。
化け物は美しい娘の姿で現れ、峠を通る人を殺傷したり、村の家々を荒らしては風のように消え去るのだという。
人々はこの化け物を“竜女”と呼んで恐れ、誰も峠に近づかなくなった。
そこで村人たちは、神通力を持つという福徳貴寺の祐盛(ゆうじょう)法印に解決を依頼した。
翌日の夜、法印は村人たちと滝の宮へ行き、不動明王の前で経を唱え始めた。
その途中、ふと寒気がして振り返ると、長い髪を垂らした妖美な乙女が佇んでいた。
乙女を見た途端、法印以外の人々は動けなくなってしまった。
すると乙女は法印に歩み寄り、「私は滝壺に棲む醜い毒蛇で、醜さ故に人や世を恨み、夜毎罪を重ねている。法印の力で罪深い自分を救って欲しい」と頼んできた。
法印は彼女に真の姿を現すことを要求したが、乙女は「元の姿を見れば他の人々が気絶してしまう」と断り、翌日の夜に法印一人だけで再訪するよう告げた。
次の夜、法印が一人で滝の宮へ向かうと、おどろおどろしい毒蛇の姿となった乙女が、滝壺の上の岩でとぐろを巻いていた。
その形相は凄まじく、炎のように輝く目で法印を睨みつけ、今にも襲いかからんばかりに牙を剥いていた。
だが法印はひるむことなく、経を唱え始めた。やがて毒蛇もその声に合わせるように唱和した。
そして法印と毒蛇は一心に経を唱え続けた。
すると毒蛇の目が和らぎ、「迷いが断ち切られ、救われた。もう私がこの辺りを荒らすことはない」と法印に礼を言った。
すると毒蛇の目が和らぎ、「迷いが断ち切られ、救われた。もう私がこの辺りを荒らすことはない」と法印に礼を言った。
毒蛇は体から三枚の鱗を剥がすと「困ったことがあった時、この鱗を出して、天の福、地の徳、人の貴を念じて祈れば、必ず願いが叶うだろう」と言って法印に差し出した。
そして毒蛇は大きな竜になり、金色の光を放ちながら彼方へ飛び去って行った。
辺りには何とも言えない良い匂いが漂っていたという。
辺りには何とも言えない良い匂いが漂っていたという。
それ以来、倶利伽羅峠に化け物が現れることはなくなったという。
竜女から貰った三枚の鱗は、寺宝として福徳貴寺に納められた。
不思議なことに、この鱗を出して祈れば、たちまち雨が降ってくると言われている。
『親と子の ふるさと西紀の民話集』「竜女がくれた三枚の鱗」より
伝承地:丹波篠山市栗柄・不動の滝