池の尾の主 (いけのおのぬし)


ある男が池の尾という山で大雨に降られ、近くの炭窯で雨宿りをしていた。
すると池の尾の主が穴を掘りながら上がって来たので、男は褌に主を包み、背負って家へ持ち帰ろうとした。
だが褌ヶ原という所まで来ると、淵の方から「池の尾のおばちゃん、どこへ行く」と声がした。
すると背中の褌から「褌にくくられて行く」と返事があった。
男は驚き、主を淵へ投げ捨てて逃げ帰ったという。
以来、そこは「褌ヶ淵」と呼ばれるようになった。

『伝承文芸』第十号「褌ヶ淵(物言う魚)」より


「穴を掘りながら上がってきた」とあるので、池の尾の主は普段は土の中に棲んでいるんでしょうか。
ちなみにこれは『日本昔話大成』でいうところの「物いう魚」に分類される話で、類話は宮城、静岡、兵庫、鳥取、沖縄など、北から南へ広く分布しているようです。
ほとんどは「拾った魚が喋る→ビックリして捨てて帰る」という流れですが、沖縄県では「拾った魚が『一波寄するか、二波寄するか、三波寄するか』と喋るので人にあげる→貰った人が魚を食べようとしたら大津波が起きて全て流されてしまう」という不幸に見舞われるオチの話もあります(『南島説話』)。
丹波・丹後地域にも、丹波篠山市や京丹後市に類話が伝えられています。


伝承地:京都市右京区京北井戸町?
「池の尾」「褌ヶ淵」の正確な位置は不明。