ヌッペラボーの怪物 (ぬっぺらぼーのかいぶつ)


江戸時代、小多利村に丹波屋の由良嘉兵衛という男がいた。
ある日の夕暮れ、嘉兵衛は神池寺へ向かっていた。
すると、寺へと続く道のそばにある椿の大木から、目も鼻も口もない「ヌッペラボー」の怪物が逆さまに吊り下がった。
嘉兵衛は慌てて寺へ登り、そのまま寝てしまった。
真夜中頃、丹波屋の男衆が「急用が」と呼びに来たため、嘉兵衛は店へ帰ることにした。
そして例の椿の所まで来た時、不意に男衆が「旦那の見られた怪物は、こんなものじゃなかったか?」と言った。
次の瞬間、男衆はヌッペラボーの怪物になり、椿から逆さにぶら下がった。
更にヌッペラボーは首のない怪物に変身し、これを見た嘉兵衛はショックで寝込んでしまい、数日後に死亡したという。

この怪物は南北朝の動乱時、六波羅勢に捕まり、神池寺の「地獄谷」という所で木に逆さ吊りにされ、耳と鼻を切り取られた上、谷底に投げ捨てられた若者二人の怨霊だという。
この他にも狐狸が大木に化けて現れることもあったが、神池寺の法橋上人が供養碑を建立したことで、怪物の類は出現しなくなったという。
この椿は伐られてしまい、現在は残っていない。

『多利郷土誌』「ツバキの怪物」より


『太平記 巻ノ八』には、元弘三年(1333年)に「神池寺の僧兵たちが六波羅勢に全滅させられた」という記述がありますが、惨殺されて怪物と化した若者もこの関係者だったのでしょうか。


伝承地:丹波市市島町多利・神池寺