池の怪物 (いけのかいぶつ)*
昔、市場村から小倉村へ抜ける街道の森に池があったが、夜になると奇怪なものが出るため通る者はいなかった。
ある時、小倉村を訪れた虚無僧は、長者の家の娘が暗い表情をしていることに気づき、訳を尋ねた。
娘は「先日、父が街道の森で池の怪物に遭遇し、命を助ける代わりに娘を嫁に差し出せと言われ、断り切れず約束してしまった」と説明した。
すると虚無僧は「私が何とかしよう」と言い、約束の日まで長者の家に滞在した。
そして当日、虚無僧は女物の着物を着て、尺八を吹きながら一人で池へ向かった。
父娘は一晩中虚無僧の帰りを待ったが、彼が二度と戻って来ることはなかった。
ところがそれ以来、街道の森に池の怪物が現れることはなくなった。
その後、村人が夜に池を通った時、静かで満足したような尺八の音が聞こえたという。
村人たちは虚無僧の霊を慰めるため、この池を「こも池」と名付けた。
『舞鶴の民話 第二集』「こも池(小倉)」より
残念ながら舞台となった「こも池」は現存していないそうです。
伝承地:舞鶴市小倉