木娘 (きむすめ)
南桑田郡保津村西垣内の保津川(大堰川)の堤防には、落葉樹が並んで植えられている。
夜にそれらの木を凝視していると、美しい丸髷の娘が物思いに耽るような姿で浮かび出るという。
これは狐狸の仕業だと言われている。(『丹波の伝承』)
街路樹が娘の姿に見えるという、いわゆる“木娘”は京都市でも目撃されており、当時の雑誌や新聞にもその名前が見られます。
以下は京都市の木娘目撃談です。
以下は京都市の木娘目撃談です。
昭和二十四年(1949)八月、上京区の大応寺境内の大木に、島田髷、前髪、矢の字の帯を結んだ娘が浮かび出たという。
これは継母にいじめられて自殺した娘の怨霊が木に取り憑いて木娘となり、自分の家を樹上から睨みつけているのだと言われた。(『京の怪談』)
昭和二十五年(1950)六月には、中京区上ノ下立売通の建具屋の庭にあるケヤキの大木が桃割の娘、または高島田髷の娘の後ろ姿に見えると話題になった。
昔この付近は墓地だったからだとか、以前建具屋に住んでいた娘が死後に法事が行われなかったことを怨んで現れたなどと言われている。(『京の怪談』『京都新聞』)
同年七月、左京区田中西河原町の千菜寺(光福寺)墓地にあるムクの大木が日本髪の娘に見えたという。
木娘の噂を聞きつけた見物人が夜な夜な集まり、自警団が警備に出る程の騒ぎになったという。(『京の怪談』)
この他、下京区河原町四条畷には、女の形に見えるイチョウ、枝に釣瓶がかかり人の首が上下するイチョウ、平将門の首が晒されて光って飛んだイチョウなどがあり、とにかくイチョウは恐れられていたという。(『上方 68号』)
『丹波の伝承』「小娘木」
『保津百景道しるべ』「小娘の木跡」
『保津百景道しるべ』「小娘の木跡」
『京の怪談』「木娘現わる」
『京都新聞』昭和二十五年六月十五日夕刊「あれが木娘や」
『上方』68号「洛南随筆(二)」より
*文中の丸髷、島田髷、桃割、高島田髷、日本髪とは当時の女性の髪型のこと。
木娘は近隣では大阪府や福井県でも目撃されたらしく、大阪では高津入堀のイチョウが後ろ向きの島田娘に見えた、阿波堀のエノキが馬に乗る兵隊に見えたとあります。(『上方 31号』)
また「遊女イチョウ」「坊主イチョウ」「乳呑イチョウ」「大師イチョウ」など、人の形に見えるイチョウが多く存在していたそうです。(『おおさか図像学』)
福井では高浜町の西恩寺墓地に女の頭に見えるというイチョウがあり“お化けイチョウ”と呼ばれていたと伝えられています。(『若狭高浜むかしばなし』)
伝承地:亀岡市保津町西垣内・大堰川堤防 他