双六を打つ幽霊 (すごろくをうつゆうれい)


丹波亀山の大森彦五郎という侍には美しい女房がいたが、彼女は出産の際に死んでしまった。
それから三年後、一族の勧めにより彦五郎は再婚した。
新しい女房はよく出来た妻で、死んだ前妻のために毎日回向を続けていた。
前妻は双六が好きで、生前は幼い頃から彼女に仕える腰元といつも双六を打っていた。
そして死後も夜な夜な現れ出ては腰元と双六を打っており、それは三年も続いていた。
ある夜、腰元は前妻の幽霊に「こうして毎夜双六を打ちに現れていることが家人に知られたら、嫉妬で迷い出たのだと思われてしまいます。ですから、もう今夜限り来ないで下さい」と言った。
すると前妻は「確かに。まさか双六に執心があって出て来ていると人は思わないだろう。今夜を最後にもう来ないことにする」と言って帰っていった。
後に腰元が彦五郎夫婦に前妻のことを告げると、二人は双六の盤をこしらえ、彼女の墓に供えて懇ろに弔ったという。

『諸国百物語』「大森彦五郎が女ばう死してのち双六をうちに来たる事」より


伝承地:亀岡市